■会社概要
1. 会社概要
イノベーションホールディングス<3484>は旧 (株)テンポイノベーション(以下、旧 テンポイノベーション)が2024年10月1日付で会社分割によって持株会社体制へ移行し、商号を変更した。経営理念に「貢献創造~挑戦と進化~」を掲げ、飲食店向けの居抜き店舗を転貸借する店舗転貸借事業、家賃保証事業、及び不動産売買事業を展開している。飲食店舗の総合プロフェッショナル集団であり、飲食店舗転貸借ビジネスの先駆者である。
2026年3月期中間期末時点の総資産は16,231百万円、純資産は4,267百万円、自己資本比率は26.2%、発行済株式数は17,674,400株(自己株式900,660株を含む)、連結ベース従業員数は170名である。グループは持株会社の同社及び連結子会社3社(テンポイノベーション、アセットイノベーション、セーフティーイノベーション)で構成されている。なお2009年7月に同社の親会社となったクロップス<9428>が、2026年3月期中間期末時点で同社の株式59.88%(自己株式除く発行済株式総数に対する割合)を所有し、クロップスの連結子会社となっているが、営業上の重要な取引はなく経営上の独立性も確保している。
2. 沿革
同社は2007年11月に(株)テンポリノベーション分割準備として設立し、2007年12月に(株)テンポリノベーション(旧 テンポリノベーション)から飲食店舗出退店支援事業の一部(出店希望者に対する物件の紹介、出店に関する支援及び退店希望者に対する店舗設備の買取り、退店に関する支援等で、(株)レインズインターナショナル関連以外の物件に関わる事業)を会社分割によって承継した。旧 テンポリノベーションは飲食店経営を目的に、レインズインターナショナルの子会社(設立時の商号は(株)レイフィールズ)として2001年10月に設立され、2005年4月に居抜き店舗物件(これまで利用していた造作・設備・什器等が付いたままの物件)を活用した飲食店舗出退店支援事業を開始した。このため同社の実質上の事業活動の開始を2005年4月としている。
2008年1月に(株)テンポリノベーションに商号変更した後、2008年5月に(株)テレウェイヴ(現(株)アイフラッグ)の傘下、2009年7月にクロップスの傘下と親会社が変わったが、2011年6月に代表取締役社長に原康雄(はらやすお)氏(現任)、常務取締役に志村洋平(しむらようへい)氏(現 専務取締役)が就任し、事業領域をサービス業としての出店支援事業ではなく、不動産業としての店舗賃貸事業と位置付けて「第2の創業期」とした。そして2013年5月に(株)テンポイノベーションへ商号変更、2017年10月に東京証券取引所(以下、東証)マザーズ市場へ新規上場、2018年10月に東証第1部へ市場変更、2022年4月に東証の市場区分見直しに伴ってプライム市場へ移行、2024年10月に持株会社体制へ移行して商号を(株)イノベーションホールディングスへ変更した。
■事業概要
店舗転貸借事業、家賃保証事業、不動産売買事業を展開
1. 報告セグメント区分
同社は報告セグメント区分を、飲食店向けの居抜き店舗物件を転貸借する店舗転貸借事業(店舗家賃保証事業を含む)及び不動産売買事業(売買物件保有期間における賃料収益を含む)としている。店舗転貸借事業はテンポイノベーション、不動産売買事業はアセットイノベーション、家賃保証事業はセーフティーイノベーションが、それぞれ事業会社として展開している。
店舗転貸借事業の売上高(外部顧客への売上高)は2021年3月期の9,568百万円から2025年3月期の15,162百万円へ約1.6倍に拡大した。ストック型のランニング収入(賃料・更新料収入)が安定的に拡大している。営業利益は2024年3月期に一時的に減少したものの、2025年3月期には2021年3月期の495百万円に対して約2.5倍となる1,238百万円へ拡大した。営業利益率も同様に2024年3月期に一時的に低下したものの、2025年3月期には家賃保証事業の拡大も寄与して過去最高となる8.2%へ上昇した。不動産売買事業は2025年3月期に売上高が大幅に増加する一方で営業利益率が大幅に低下するなど、売上高、営業利益、営業利益率とも大型案件によって変動する傾向があるが、不動産業者とのリレーションシップ強化も視野に、一定の保有枠の中で資金効率を重視して売買を行っている。なお2026年3月期中間期は、店舗転貸借事業の売上高が8,581百万円、営業利益が734百万円、営業利益率が8.6%、不動産売買事業の売上高が825百万円、営業利益が264百万円、営業利益率が32.1%だった。
店舗転貸借事業は「東京・飲食店・居抜き」店舗に特化
2. 店舗転貸借事業
テンポイノベーションの店舗転貸借事業は、不動産オーナーから賃借した店舗物件を飲食店テナントに転貸借する事業である。ターゲットを「東京・飲食店・居抜き」店舗に特化して事業展開している。ターゲットエリアは飲食店舗が集中して需要が見込める東京23区を中心とする首都圏1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、ターゲット顧客は低コストでの飲食業の出店・起業を希望する小規模事業者、ターゲット店舗は出店費用を抑えることができるため出店・起業希望者が多い飲食店の居抜き店舗である。賃借する店舗物件は不動産業者・提携先・既存出店者等の紹介や「店舗買取り.com」を通じて仕入れ、転貸借する出店希望者は不動産業者の紹介や「居抜き店舗.com」を通じて獲得している。
店舗のプロが関わることで安心安全な店舗経営と賃貸経営を実現
(1) ビジネスモデル
同社の店舗転貸借事業は各方面それぞれにメリットがあるビジネスモデルだ。不動産オーナーにとっては賃貸料収入の安定や店舗出店者管理からの解放、不動産仲介にとっては店舗物件紹介や出店希望者仲介による収益獲得機会の増加、店舗出店者にとっては居抜き店舗を利用することによる出店費用の負担軽減や物件開発活動工数の削減、店舗撤退者にとっては原状回復工事等の閉店費用・業務の負担軽減というメリットがある。店舗物件の関係者が多岐にわたり内装設備や法規制など専門性も必要なため、同社のような店舗物件専門のプロが関わることで安心安全な店舗経営と賃貸経営をともに実現できるビジネスモデルとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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