揺らぐFRBへの信認
このように、7月上旬の雇用統計を契機に、世界は米国株発の過度な楽観相場が続いています。
雇用統計でなぜこれほどまで妄想が進むのかについては、雇用統計後の記事で詳細したように、FRBが金融政策を放棄するような無責任な発言をしたせいです。
通常、強い雇用統計が出ればマーケットは「早期利上げ観測」が台頭することで、マーケットの過熱感を調整させますし、FOMCメンバーもそうリードするような発言をします。しかし、6月FOMCで、「いろいろ不透明なので何があっても当面利上げはしない」というメッセージを出してしまいました。
つい数か月前までは6月利上げをマーケットに織り込ませるため、多くの要人が6月利上げ支持の発言を繰り返していたのです。それが6月FOMC以降、突然利上げ時期を明示しなくなり、ちょっとくらい強い指標が出ても年内利上げはしないようなトーンを出してしまったので、「景気がどんなに過熱しようが、マーケットがどんなに過熱しようが、どんなに強い統計が出ようが、FRBは動かない」とマーケットが取ってしまったのです。
先々週以降、再度FOMCメンバーはタカ派的な発言に修正しましたが、「利上げやるやる詐欺」と思われているので、マーケットは全く聞く耳を持たなくなっています。つまり、FRBの信認が低下したのです。
暴落前夜
マネーは全く増えていないというのに米国株が上げ続けるので、現在の米国株はリーマンショック以降で最も過熱している状態と言っても過言ではありません。
なので、何かのトリガーで膨らみきった風船は突如破裂する危険を孕んでいます。また、フランステロ、トルコクーデター未遂、ドイツの乱射事件など、毎週末のようにイスラム教徒に絡んだ地政学的リスクが発生しているので、人々のセンチメントは下方/リスクオフに向かい易い状態になっています。
風背が破裂したら一気にリスクオフに向かうので、円は再度急騰するでしょう。そうなると、米国株と円相場という二つのエンジンで大幅高を演じてきた日本株は、一気に逆回転の売り浴びせを喰らう可能性が高いです。
今のマーケットは、「○○ショック」等のように名前がついている過去の暴落前夜に近いかなり危険な状態です。
『元ヘッジファンドE氏の投資情報』(2016年7月25日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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