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日銀緩和の行方~産経のグッジョブとブルームバーグのミスリード=E氏

黒田日銀総裁、産経単独インタビューのポイント

一方、先月の苦し紛れとも思える日銀ETF買い入れ倍増で、当面の追加緩和は出尽くしたと思われ円急伸を招きましたが、産経新聞との単独インタビューでこの件に関して黒田日銀総裁が答えています。Bloombergや日経新聞も産経の引用記事を載せたくらいにタイムリーな内容なので、産経グッジョブです。

いろいろ書いてありますが、ポイントは以下の通りです。

  • サプライズは見直す
  • 緩和効果の検証は次の会合時に同時発表する
  • マイナス金利はまだ限界ではない

この会見を踏まえ、Bloombergなどは「追加緩和の可能性は十分ある」というタイトルで記事を配信していますが、これは多分にミスリードです。
日銀総裁:追加的緩和の可能性十分ある、総括的検証踏まえ-産経 – Bloomberg

上の記事では、検証結果後に直ぐに追加緩和しそうな勢いで書かれていますが、事実は「総括的な検証を踏まえて、必要ならば今後も緩和を継続します」という言い方なので、ニュアンスが全く異なります。

検証した結果、効果がないと判断された手段は即時に止める可能性も高いのですから、追加緩和だけが行われるのではありません。反対も十分にありえます。

また、一番上の「サプライズは止めた」という発言は、今年1月のダボス会議以降、私はずっと「黒田日銀総裁の発表スタンスが変わった」と書き続けていましたので、私の読みどおりです。

そして、注目される次回にありうる緩和ですが、これは一番最後のポイントのように金融機関が嫌うマイナス金利の可能性が高そうです。このインタビューでマイナス金利はまだ限界ではないと書いていますが、重要なのは国債買い入れ増額やETF買い入れ増額は限界ではないという言い方を一切していないことです。

マイナス金利だけ「限界ではない」と発言していることを踏まえると、マーケットは「では、国債買い入れやETFは打ち止めの可能性が高いということか」と考えるのが自然です。

今年1月の日銀政策決定会合でマイナス金利導入の決定をしてからの円相場を見ると判るように、マイナス金利はパワー的には国債買い入れより劣る手段なので、今更これを出さなければいけないという「持ち駒の無さ」を露呈させてしまったことで円高になったのです。

しがたって、今回の「マイナス金利はまだ限界じゃありません」という発言は、追加緩和の可能性を示唆するものの、材料出尽くしに近いので円高に振れやすいといえます。

実際、国債利回りは先月末の「緩和手段の効果を検証する」報道で大きく下落したままです。

しがたって、週末の産経報道で追加緩和観測が出るかもしれませんが、マネーを増やす緩和ではなく、金融機関の収益力を削ぐマイナス金利拡大の可能性が高く、他の手段は打ち止めの可能性が高いととられると見ています。

これは、日銀発のマネーがピークアウトすることを意味しますので、円高株安、そして世界的にリスクオフに繋がりやすいニュースと言えます。

8月は日銀政策決定会合が開催されないので、当面今回の産経単独インタビューの解釈がマーケットに織り込まれていくだけと思われます。

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元ヘッジファンドE氏の投資情報』(2016年8月22日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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