テロや金融危機では「食糧難」は考えにくい
これは、たしかにありそうなことのように聞こえるかもしれない。「ダーイシュ(IS)」によるテロは激増しているし、「ドイツ銀行」の破綻はリーマンショックを上回り、欧州全体を巻き込む金融危機になることは間違いない。
しかし、一歩引いてよく考えて見ると、これらの出来事だけでは水や食料の備蓄が必要となる状況にはならない。
備蓄が必要な状況とは、
- 通貨価値の極端な下落によるハイパーインフレーションによって食料を買うことができなくなる
- 浄水や輸送にかかわるインフラそのものが破壊され、国民の手に届かなくなる
- 国外からの食料の輸入が途絶する
などの3つに限られることが分かる。
1945年の敗戦による日本による経済崩壊は(1)であったし、(2)と(3)は戦争に巻き込まれ、国内の施設が大規模な攻撃の対象となった際に発生する。これは歴史で何度も繰り返してきたことだ。
反面、金融危機やテロ、また大規模な自然災害だけでは発生しにくいことが分かる。
もちろん金融危機がドイツ経済の根本的な崩壊を伴う規模であれば、食料が手に入らない状態に陥ることは間違いないだろう。預金の封鎖が起こった近年のギリシャでは、短期間だがそうした状況が発生した。
だがドイツが、将来ギリシャと同じレベルの経済崩壊を引き起こすとは、少なくともいまの時点では考えにくい。
当然、「ドイツ銀行」が破綻すると、ドイツ経済には大きな痛手であろうが、すでにこれは予測できる危機なので、迅速に破綻処理は実施され、ドイツ経済への余波は最小限に抑えられる処置が取られるだろう。
さらに自然災害やテロでも、食料が全国的に手に入らなくなる状況は考えにくい。東日本大震災のような前例のない大規模災害でも、食料のような基本物資の不足は、被災地とその周辺地域に限定されていた。
またテロであれば、浄水や輸送のインフラが攻撃対象になったとしても、やはり攻撃が実施された施設や地域に影響は限定されるはずだ。