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ドイツが恐れるテロでも金融危機でもない「第3の脅威」プーチン・リスク=高島康司

エスカレートする緊張

一見するとこれは些細な事件のようにも見える。ロシアが併合したクリミアにウクライナの特殊工作部隊が侵入し、爆弾テロを計画したというものだ。ましてや、人的被害の拡大をねらった大規模テロではないように見える。クリミアの観光業への打撃を意図した比較的に穏健なものだ。

しかし、これに対するロシアの反応は厳しかった。8月12日、プーチン大統領は声明を発表し、ロシアはクリミアでのこの事件に対し、必ず報復を行なうことした。

プーチン大統領は、ウクライナ政権は紛争の平和的解決ではなくテロに訴えようとしているとしてこれを非難。強硬な報復策のひとつとして、外交関係の断絶も視野に入れるとしている。

ロシア大手紙の『イズヴェスチア紙』の情報によれば、政府内では外交断絶の案がすでに審議されているが、最終的な決定は大統領自身が下すとしている。

さらに翌日の8月13日、『インタファクス通信』によると、ロシアのメドベージェフ首相は、ウクライナとの関係断絶を排除していないとし、ロシア軍がグルジアに侵攻した2008年「南オセチア紛争」のときのような外交断絶もあり得るとした。

ウクライナとの関係でこのようなシナリオの繰り返しを望んではいないとしながら、この問題に関する最終決定はロシア大統領が行うとしている。

「戦争準備」を進めるウクライナ

しかし、これでも事態は収拾に向かわなかった。8月29日、ウクライナの『ヴェスチ紙』の報道によると、ウクライナ国防省は軍事委員部に対し、緊急動員を準備するよう指令を出した。

国防省の関係筋は、「指導部は国の東部での軍事的煽動を警戒している。そうした煽動がクリミアないしドンバスのいずれの地域で起こりうるのか、現時点では不明。だが早急な動員が全員に指示された」としている。

緊急動員」と聞いてもピンとこないかもしれないが、これは戦争に向けての全軍配備の指令である。これが、外交関係断絶を匂わすロシアに対するウクライナの反応であった。

記事の内容からすると、ウクライナは親ロシア派が占拠する東部諸州における戦闘を警戒しているようだ。

Next: ロシア軍が国境地帯に展開開始、ウクライナを包囲か

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