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逆説の日本復活論。「トランプの関税」は我が国を再びバブルに導くか=児島康孝

内需拡大を促した前川リポート

さて、日本の話に戻りましょう。1986年、前川リポートは、当時の日銀総裁「前川春雄氏」を座長としてまとめられました。中曽根政権のもとで、対米輸出問題(経常黒字問題)への対応が必要となり、まとめられたものです。

この前川リポートの評価には賛否両論があり、バブルの原因をつくったとか、いいや内需に注目した良いリポートだとか、評価は様々です。内容的には、内需拡大(経常収支の均衡)を目的として、日本の住宅建設の促進、国民の所得の増加、輸入の拡大、金融市場の自由化などを提言しています。この前川リポートの内容および内需重視の考え方は、現在でも十分通用するでしょう。

反面、当時「ウサギ小屋」と世界から嘲笑されていた「日本の住宅問題」に過度に対応して、住宅建設に大きな配分を置いている印象です。考え方は評価できる一方、住宅・不動産投資への偏重は「問題あり」と思います。

その後の日本のバブルは、おそらく対米配慮的な「数合わせ」の必要から住宅・不動産投資に拍車がかかり、不動産バブルへと向かうことになったのでしょう。

ブラザ合意の時代背景と似ているトランプ政権の主張

前川リポートの前年の1985年には、プラザ合意(9月)で1ドル=240円付近から、1985年末には200円付近へと大幅に円高ドル安に誘導されました。

会場となったニューヨークのプラザホテルは、セントラルパークのすぐ南側(東南側)にあり、ホワイト系の色の外壁にエメラルドグリーンの屋根が美しい歴史的な建造物です。セントラルパークをめぐる馬車が、このあたりから出ています。また、5番街のトランプタワーへも、南側に歩けば数分。

前川リポートは、そのプラザ合意でもなかなか減らない日本の経常黒字の是正と、それぞれの先進国の内需拡大への努力を反映したものです。おそらく、トランプ政権の言い分は当時と似ていて、「アメリカの景気が回復しても“タダ乗り”しないでいただきたい」「商品を売りたければ、アメリカでつくるか、自国の内需を拡大して自国で売ってください」ということです。

一言でいえば、トランプ政権の経済政策は、アメリカの内需拡大策。雇用が回復すれば、それがさらに国民の消費を呼び、驚異的な景気の上昇もあり得ます。中間層の回復や国民の消費拡大は、景気効果が強いのです。

ところが、アメリカがそうしても、他の先進国が内需拡大努力をせずにアメリカ市場が良いからと対米輸出をすると、その国にアメリカの努力を吸い上げられてしまいます。自国の内需拡大をせずにアメリカ市場で安易に儲けようとする、こういう国は許されない。こういうことです。ですから日本も、アメリカが作り出したアメリカ市場に安易に頼ることがないよう、自国の内需拡大を求められるでしょう。

保護主義が話題になると、日本製品の方がいいから売れるのはあたり前、という話になりがちです。しかし、ではその消費市場は誰が(どの国が)どういう努力で作り上げたものでしょうか? これは、重要な問いかけです。

日本は、「自国の消費市場を拡大すべきだ」とアメリカに言われても、それはそのとおりとしか言いようがありません。

Next: 人件費の「ピンハネ」を許さないトランプ大統領の政策

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