生身の人間は人工知能(AI)には勝てない
人工知能はその全能ぶりで、今後10年に渡ってありとあらゆる人々の仕事を奪っていく。
「人間」は8時間しか働かず、サボり、文句を言い、休日を必要とし、パフォーマンスが一定しないのに高賃金・好待遇を要求する。
企業はそんな「人間」を切り捨てて、どんどん人工知能に入れ替えていく。
その迫り来る脅威をまだ多くの人々は他人事のように見ているが、10年後には大きな社会問題になるのは必至だ。
しかし、問題はそれだけではないのだ。
人工知能の判断能力は人間を圧倒的に凌駕するので、あらゆる分野で人間は勝てなくなってしまう。
チェスや囲碁やポーカーや各種オンラインゲームの分野で、人工知能は第一人者を完膚なまでに撃破している。判断能力の点で、人間はもうAIに勝てなくなった。
人工知能が人間を打ち負かす局面は今後もさらに広がっていくが、他の業界に先駆けて、その「判断」が世の中を動かしている場所がある。それが金融市場である。
人間に短期トレードで勝てる余地はない
人工知能は、市場の価格変動にひるむことなく、過去データ、類似チャート、統計、数理、理論などのすべてを瞬時に解析して、取引の執行まで自動的にやってしまう。
アルゴリズムに則って、判断から執行から売却までのすべてを高速で行う。1秒間で売買を何回も行うことも可能だ。
こうしたアルゴリズムに則った取引手法は「クオンツ系」と呼ばれているが、人工知能がさらに解析を磨き上げてクオンツ系のレベルを引き上げることになる。
クオンツ系の弱点としては、硬直した類似パターンの動きをしやすいというものがあったのだが、これが人工知能によって克服されてより高度な取引になっていくのである。
もちろん、その中で人間が挑んでも撃破される可能性が高い。人間は瞬時に莫大な変数を把握して理解できないし、高速取引も機械にかなわない。相場の世界で人間は人工知能が支配するクオンツ系には勝てない。
結局、金融市場の相場は各社が所有するクオンツ系のアルゴリズムの戦いになっていくのだが、そこに人間が入り込む隙間はどこにもない。