下げ幅は増幅され過ぎている
さて、(1)のパウエル議長証言については、議長自身が「個人的な見解」だと断ったように、3/20(火)~3/21(水)のFOMCの公式な金利見通しにおいては、年3回利上げするとのメインシナリオに変更はないだろう、という観測があり、うなずけるところです(強気方向となっても、年3回がメインのままで、4回の可能性が若干高まっていることが示唆される程度)。実際、3/1(木)の上院での証言では、議長は、「現時点で景気過熱の証拠はない」と語り、火消しに回った感もあります。
(2)のトランプ発言については、保護主義自体は、米国経済や市場にとって、悪材料であることは事実です。
それは、
- 海外からの安価な輸入品が減り、国内インフレを引き起こす(このため、金利も上がる)
- 米国が貿易収支を改善したいため、米ドル安にしたいとの観測が強まる
- 主に標的とされている中国が、報復措置のため、米国債を売却するとの思惑が広がる
といったような点によります。
ただ、保護主義的な政策については、米産業界や議会共和党(もともと共和党保守派は、自由貿易を標榜している)からの反発も強く、だからこそ一時トランプ大統領は、TPP交渉への復帰の可能性を表明するなど、軌道修正を図らざるを得なくなってもいるわけです。
また、今回の鉄鋼とアルミ製品への追加関税は、EU(欧州連合)からも反発を招き、欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は、今後数日中に米国への対抗措置を提案する、と表明しています。
加えて、諸国がWTO(世界貿易機関)に今回の米国の措置を提訴する可能性が高く、米国の行為がWTO協定違反だという判断が下れば、米国が追加関税を取り下げる展開となることもありえます。
加えて、トランプ政権が保護主義的な動きを示すのは、以前からのことであり、今になって大きく騒ぐのも、腑に落ちないところがあります。
以上から、今回(1)(2)といった材料を受けて米国株価が下落したのは頷けるとしても、下げ幅は述べたように「リスク・パリティ取引」などによって増幅され過ぎている感があります。