fbpx

グローバル株主資本主義が進むとその国は退化する?

二つ目の理由は「経営者から長期的な視点を失わせしめる」こと

二つ目。グローバル株主資本主義の蔓延は、経営者から長期的な視点を失わせしめる。というよりも、経営者の報酬もストックオプションが中心になっていき、株主と経営者が一丸となって「短期の利益拡大」を目指すことになるのだ。

当然、生産性向上の効果が出るまで長期間必要で、それどころか成果が出るか否かも投資時点では不明な技術開発投資は、次第に忌避されるようになっていく。重要なのは株価を引き上げ、配当金や自社株買いを増やす「短期の利益」というわけで、正しい意味での「企業の競争力の強化」が疎かになっていくのである。

とはいえ、企業が存続・成長していくためには、技術導入は必要だ。というわけで、多くの企業が、「技術は外から買ってくればいい」という、「技術の本質」を無視した経営となっていく。

技術の本質とは、「真の意味における技術力とは、蓄積によってしか磨かれない」という点になる。「蓄積」の中には、当然ながら各種の失敗が含まれる。最終的に実が成った技術の背後には、無数の「失敗」が必ず存在しているのだ。

ところが、短期的な利益を追求する企業経営者や株主は、失敗を許容できない。結果的に、企業の技術開発投資は下火となり、長期的な「退化」が始まる。

酷い話であるが、先の「財政均衡主義」と短期的視点が結びつくと、大学等、本来は短期的利益を追求するわけではない組織体までもが「四半期の成果」を要求されるようになっていく。すでにして、我が国の大学においても教授らは「短期の成果」を要求され、結果を出せない場合は予算を削られるなどの憂き目に会っている。

そもそも、短期的な利益が出ない研究開発だからこそ、公の機関である大学が担当するべきなのだ。それにも関わらず、グローバル株主資本主義の蔓延は、象牙の塔であるべき大学内においてまで短期利益を要求するようになっている。

グローバル株主資本主義に何らかの規制をかけない限り、今後の世界は「技術発展が需要に追い付かない」状況になり、「技術が需要を創出した」過去二十年間とは真逆の環境に置かれることになるだろう。

週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』 Vol.318より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

1 2

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~

[月額660円(税込) 毎週土曜日]
日本の新聞・テレビなどのマスメディアでは、上記のフレーズがあたかも「常識」のように使われている。本メルマガでは、正しい数値データに基づき各種の「嘘の常識」を暴き、ボトルネックを取り去ることで、日本経済が着実な成長路線を進めるようコンサルティングを提供する。大人気Blog『新世紀のビッグブラザーへ』著者、三橋貴明が綴る必読参考書です。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー