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日銀ETF買い「官製相場」に波乱を起こす2つの要因

日経平均株価は2万円台前半でもみ合い中ですが、日銀ETF買いへの期待感などから底抜けするムードにはありません。『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治氏は、この「官製相場」における今後の波乱要因として、海外勢の利益確定と、官僚の責任回避体質を挙げています。

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日銀のETF買いの手口

月間2500億円の買いは、1回が360億円で、月間平均7回です。1回の360億円は、なぜか、固定されています。

前場の日経平均が0.3%(60円)程度下げると、13時15分に、360億円の買いを入れます。この年間3兆円の買い枠は、わが国の株式相場を底支えできるくらい大きなものです。

【2014年10月からGPIFの株買いが加わった】
国民年金と厚生年金の基金を運用しているGPIF(資金量137兆円)も、2014年10月に、11%だった国内株への運用枠を、25%(34兆円)に増やしています。

2014年の12月末には19.8%(27兆円)の構成比で保有しているので、2015年中の買い枠の残りは、7兆円です。GPIFの7兆円の買いが、例えば向こう1年間で実行されると毎月6000億円もの買いになって、株価は高騰せざるを得ないでしょう。

(注)ただし、GPIFの保有株の価格の変動もあるので、買い枠も変動します。

【ゆうちょ銀行とかんぽ生命も、株買いに参入する】
15年秋に民営化を控えているゆうちょ銀行(資金量208兆円:15年3月)も、日銀に国債を売っている額(年間20兆円)から見て、国内株10兆円と海外株10兆円を買い越す方針を決めるはずです。かんぽ銀行(資金量87兆円)も、ゆうちょ銀行と同じ方針でしょう。

【合計】
以上のように、2015年の国内株式市場には、
(1)日銀による年間3兆円のETF(上場投信)の買い、
(2)GPIFによる7兆円の株の購入(ETFが中心)、
(3)ゆうちょ銀行の10兆円、
(4)かんぽ生命保険の数兆円が注がれます。

枠は合計で二十数兆円ですが、1年間で使われるのは15兆円くらいと見ています。月間平均で1.25兆円です。週間では3000億円です。

日本の株式の売買額は、現在、1日平均で2.8兆円くらいです。売りが1.4兆円、買いが1.4兆円です。週間(5日間)で、平均3000億円も買いを続ければ、「買い>売り」になって、上がるに決まっています。

15兆円は、日本株が8000円台から倍の1万6000円に上がったときの外人投資家の1年間買い越し額と同じです(2013年)。

ドル/円相場でも、官の資金によるドル買い

2015年5月15日前後は、1ドル119円くらいでした。これが5月末に向かって123円、124円と上げています。今日(6月8日)は125円51銭という円安です。

15年6月8日の午後3時での売買では、
・機関投資家とヘッジ・ファンドに多い「ドル買い/円売り」が54%
・個人のFXトレーダーに多い「円買い/ドル売り」が46%
です。「ドル買い/円売り」が8%も多いので、円は下がりドルは上がります。

GPIFと郵貯は、国内株と同じ額の米国株を買い、同時に、米国債を買っています。これが、2014年11月以来の、官の資金の運用でのポートフォリオ変更による円安(ドル高)の理由でもあるのです。

官のドル買いとともに、国債を日銀に売った民間金融機関(銀行と生命保険)も、その現金で、ドル買い/円売りを行っています。米国の10年債の金利が2.4%と高くなっているからです。FRBが、年内に利上げするであろうという観測からです。

株価のリスク

官の買いで、日本株が上がりすぎる危険が出たときは、買いは控えられます。しかし下がった時は、100%買いを入れます。

上がると売る逆張りが多い個人投資家の売りが、現在の1.5倍や2倍になれば話は別ですが、個人の売り超の金額が増えないとすれば、下がることはないでしょう。

【個人は一貫して、大きな売り超】
2015年1月から5月は、700万人の個人投資家の売り超(売り-買い)は、累計で4兆1404億円です。

月間平均で8000億円、個人が売り越す中で、
・証券会社の自己売買での買い超が2兆2496億円
・外国人投資家の買い超が2兆7408億円
あって、年初の1万7000円水準が2万円を超えています(日経平均)。

証券会社の自己売買での買い超の中身は、日銀が月間平均2500億円で買いを入れている拠出型ETF(日経225やTOPIX)の、現物株の買いです。

日銀のETFの買いは、株を上げることが目的です。買い続けるだけで、現在のところ、売る気配はありません。

【予想価格の頂点】
株価が下がれば、日銀のETFのように、上げるための買いが入ります。以上に示したように、年間で15兆円規模の、官の資金での買い超があれば、2か月単位で株価が下がることはない。

1か月下げても、また上がるでしょう。日経平均8000円の時期に比べると、株価水準が2万円(予想PER16.5倍:15年6月:)であり、時価総額も2.5倍なので、15兆円の買い超で2倍に上がることはない。

予想PERで20倍を超えると、高値警戒の売りが増えるため、頂点で2万6000円と見ています。もちろんその価格になる前に、FRBの利上げなどの不測の事態から、下がる時期もあるでしょう。(予想PER=株価÷次期予想純益)

官製相場に波乱を起こす2つの要因

官製相場の日本の株価の波乱は、2つの要因から起こります。

(1)FRBが、$4兆(480兆円)の、ドルを増刷した量的緩和からの出口政策として利上げをし、日本株の買いの主体だったヘッジ・ファンドが、日本株で利益確定をして、投資を引き揚げるとき

ヘッジ・ファンドの株買いの資金は、親会社であるプライマリーバンク間の、レバレッジがかかるレポ金融での借りから来ています。つまり、ゼロ金利の短期資金を使ったキャリートレードです。

平均して、5倍のレバレッジがかかっているとすれば、短期0.5%の利上げが、〔0.5%×5倍=2.5%〕に相当します。

利上げがあると、債券の価格は下がるので、ヘアカット率(欠け目率)が上がり、追い証と同じ追加担保が必要になります。

こうなると、短期ゼロ金利を前提にしているヘッジ・ファンドは、日本を含むグローバル投資の解消をします。シャドーバンクの、資金調達手段であるレポ金融は、わずかな利上げが、レポ金融を大きく減らす性格を持っています。

ゼロ金利を前提にした、レバレッジがかかるレポ金融にとっては、1%以内の金利の違いが、大きな違いになります。

これは、現在、FRBの利上げ観測が少しでも出ると、世界の株価が、大きく動揺することでわかるでしょう。利上げとは言っても、0.25%、0.5%、あるいは最大でも0.75%くらいです。しかし、0.01%の金利にとっては、0.25%でも、従来の25倍の金利になります。

(2)株価の上がりすぎを警戒した、官の買いの停止

官の買いも売りも、官僚が行っていることなので、政府の意思で横並びです。

2014年5月から約1年、株を買って、相場を上げてきた官の買いが停止されれば、下げ相場での買いがなくなって、大きな下げを示します。

大きく買ってきた保有株が下がって含み損が出ると、年金基金、ゆうちょも、年金基金やゆうちょを減らす責任問題が出て、株を買い続けることはできなくなります。官僚は、責任問題の発生を、何よりも怖がる、心理的な性格をもっています。こうなると株価は、PER15倍に向かって暴落です(30%程度)。

【政府の目的】
政府・日銀が、株価を上げるのに躍起になっている理由は、2つです。

(1)日本経済は政府の政策によって好況であり、成長に向かっていると見せたい。
(2)官製相場で株価を上げることによって、企業の投資需要を増やし、株主の資産を増やすことで資産効果の需要を生み出し、消費者物価を2%上げたい。

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