進むも地獄、退くも地獄…厳しい状況に置かれる武田
このような流れで世界の製薬業界は買収を繰り返し、ファイザーやロシュ、ノバルティスといった売上高5兆円を超える「メガファーマ」が誕生しました。規模が大きくなるほど、研究開発や営業体制も整えることができ、企業体力を強化できるのです。
それに対し、武田の売上高は1.7兆円、売上高規模では世界第19位と「中規模」にとどまり、利益率も10%未満と、20~30%を誇るメガファーマから大きく劣後します。
国内売上高はいまだにトップに君臨する同社ですが、その地位も決して安泰ではありません。上位陣は拮抗し、海外メガファーマの攻勢も止まりません。これまではMR(営業員)による販売力が強みでしたが、規制強化により接待等も難しくなってきました。今後はガチンコで製品の質を競うことになるでしょう。
このまま行くと、ブロックバスターとなる製品が開発されない限り、会社としてジリ貧になってしまいます。そんな状況を避けるため、武田が取るべき戦略としては以下に絞られます。
- 買収を駆使してメガファーマを目指す
- 特定分野に特化し、規模は追わない
- メガファーマに買収される
国内最大手としての自負がある武田にとっては、(2)や(3)の選択肢は取りづらいでしょう。したがって(1)を選択するのは自明でした。7兆円の買収は大変なことですが、状況としては「進むも地獄、退くも地獄」と言ったところでしょう。
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