金融引き締めを示唆している?
というのも、現時点での金融政策は中立的という印象をマーケットに与えているのに、なぜ2020年までにあと1%の利上げを見込むのでしょう?
今回、FRBは失業率が2021年にかけ4.5%を下回り続ける見通しをする一方、コアインフレの加速を全く見込んでいません。
現在コアインフレはFRBの目標である2%に近いと見られるために、ガイダンスどおりに2020年まで利上げをするということは、コアインフレを上回る引き締めをし続けると示唆しているのです。これは中立的とは呼べず、十分に引き締めです。
トランプの介入を防ぐ巧妙な仕掛け
なぜ今回の声明では、整合性が取れないガイダンスをしているのでしょう?
これは声明発表後に開催された会見でも明らかにされませんでしたが、私はトランプ大統領による金融政策への介入を防ぐための巧妙な仕掛けかと考えています。
ご存知のように、トランプ大統領はこの数ヶ月で何度かFRBの金融政策を批判し、利上げを止めるべきだと発言してきました。中央銀行の独立性を考えると、このトランプ大統領の脅しともいえる発言は異常なことです。
この発言で従来の利上げペースが変わると、FRBに対する信認は一気に失われてしまうでしょう。このためFRBの金融政策がブレることはないというメッセージを市場に出す必要がありますが、かといって理事の任命権をトランプ大統領が握っているので、FRBが独立性を維持しようとしたら、トランプ大統領と正面きって衝突することは避けたいところです。
このような状況で、FRBができることは面従腹背的な声明を出すことくらいではないでしょうか? つまり、声明では経済の強さを褒め上げ、「緩和的」という文言を外して中立姿勢に転じただけのように振る舞っています。しかし、ドットチャートなどではコアインフレを上回る引き締めを予想することで、将来的な引き締めを示唆しているのです。
ガイダンスが引き締めなので、いつかは大統領サイドも気付くでしょうが、この迷彩で11月に開催される中間選挙までは凌ぐことは可能かと思われます。