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音楽配信サービス「Spotify」が“基本無料ビジネス”の最高峰と言えるワケ=シバタナオキ

米国で大型の株式上場が相次いでいますが、その中から音楽ストリーミング最大手のSpotifyを取り上げます。同社のビジネスはフリーミアム界の最強モデルでしょう。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2018年3月6日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

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音楽ストリーミング最大手、米国市場に上場

最近はアメリカで、大型の株式上場が相次いでいます。つい先日はDropboxを取り上げましたが、今日は音楽ストリーミング界最大手のSpotifyを取り上げたいと思います。

今回、Spotifyがニューヨーク証券取引所に上場申請を行なった際の申請書が公開されました。

今回のSpotifyの株式上場は、通常の株式上場とは若干異なり、新規に株式を発行せず、既存の株式を証券取引所に上場するという形をとっています。これをDirect Listing(ダイレクト・リスティング、直接上場)と呼びます。

通常、株式上場に際して新株を発行し、その新株を新しい投資家に売ることで資金調達を行うことは株式上場の目的の一つであるわけですが、この、新規に株式を発行して調達される金額の数%を、証券会社に支払う必要があります。

日本でも、株式上場に際してほとんど新株を発行しない形での状況がいくつか見られましたが、Spotifyの今回の例はかなり極端だと言えるでしょう。

では詳細な財務を見ていきましょう。

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最初にひとつだけ注意点を申し上げておくと、Spotifyの登記上の本社はルクセンブルクに存在し、実態としての親会社はスウェーデンにある会社であり、その下にアメリカ、イギリス、その他の国の子会社がぶら下がる形になっています。

従って決算もアメリカドルではなくユーロで開示されており、この記事でも特に注意がない限りはユーロ(EUR)で記載します。日本円への換算は1ユーロ130円として簡易的に記載したいと思います。

売上はEUR4B(約5,200億円)だがまだ営業赤字

売上と営業利益を見てみましょう。

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売り上げは2017年の1年間でEUR4B(約5,200億円)で、YoY +33%で成長しています。

営業利益は-EUR378M(約-491億円)となっており、2017年時点ではまだ営業赤字の会社です。

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EBITDAは-EUR324M(約421億円)と赤字ですが、フリーキャッシュフローは2016年からプラスに転じ、2017年はEUR109M(約142億円)のプラスでした。貸借対照表を見てみると、2017年末時点で現金が約EUR477M(約620億円)、短期に回収できる現金同等物がEUR1B(約1,342億円)程度あるため、十分な現金同等物を有していると言えるでしょう。

今回、Spotifyが新規に株式を発行して資金調達をしなかった理由の1つが、ここにあると考えられます。

未だに営業赤字であるにも関わらず、フリーキャッシュフローはプラスであり、それにプラスして十分なだけの現金同等物を保有しているため、新たに資金調達することなく株式を公開することになったのだと考えられます。

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