今一番難局に立たされているのは、トランプ政権よりも日銀
そうこうしているうちに、16年に始めたマイナス金利政策は銀行の収益構造を圧迫し続けてきたという副作用が続いてきた。
金融政策とは別に、実弾でもって株価を買い支えるというETF購入を拡大するという手もある。しかし、株式市場に日銀が介入していることは価格形成をゆがめているのに、これをなお拡大するということになる。
市場が株価を通じて企業経営を監視するという機能が、「日銀の実弾」によって損なわれる。こういう副作用も実はある。表面上に現れた銀行の利益構造の悪化、特に地銀の軒並み赤字という副作用以外に市場全体に及ぼす副作用があり得る。今一番難局に直面しているのはトランプ政権よりも日銀であろう。
これは黒田総裁が悪いわけではない。デフレ脱却という国を挙げての大目的に邁進したからである。
古い話で恐縮だが、東条内閣の時に大蔵大臣を務め、戦時予算を支えた賀屋興宣(かやおきのり)氏に対してさえも、(筆者に言わせれば、戦勝国が一方的に決めるという東京裁判でさえも)戦犯には問われなかった。
国家の大目的に資するための大蔵大臣は、時の国家の最高権力者が戦争犯罪に問われて絞首刑になっても東京裁判では戦争犯罪に問われなかった。戦勝国が一方的に決めた東京裁判というものを筆者は必ずしも信用していないが、この点だけは正しかったのではなかろうか。同じ判断基準で黒田総裁に罪はない。
繰り返しますが、相場の心を良く熟知し、口先一つで株式相場を上げ円安を導き、「対外的建前」はデフレ脱却のため華々しい効果をあげた当時の黒田総裁は英雄視された。
「英雄の末路憐れむべし」ということは、将来黒田総裁は国賊視され、日銀の出口戦略を不能にさせた男、地方銀行を経営難に陥れた男とされ、100年近く経っても「嵐に向って窓を開けた男」と非難される井上準之助日銀元総裁のようにならねばよいがと筆者は思っている。このことは一昨年暮れに行ったパネルディスカッションでも述べさせてもらった。
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『山崎和邦 週報「投機の流儀(罫線・資料付)」』(2019年1月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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