FRBやECBとは違う、日銀の出口戦略が抱えるリスク資産
ところで筆者は一昨年年末、ジャーナリスト嶌信彦氏他著名評論家とパネルディスカッションした時の基調講演で筆者が、日銀と黒田さんのことを語り、黒田総裁を「英雄の末路、憐れむべし」と言って、平維盛・源義経・織田信長・坂本龍馬・シーザー・ナポレオン等を挙げた。洋の東西を問わず英雄の末路は悲劇に終わると言って、黒田総裁の退き際を同情したことがある。
日銀の将来と黒田総裁の将来について「今は誰も言わないが」と今まで何回も述べてきたが、1月16日付の日経新聞がようやくコラムに書いてくれた。
ところで、日銀が買い続けたETFは中央銀行の組織を脅かす大きなリスクだが、国債と違って償還がない。よって、ETFはいつか売却しない限りは日銀の貸借対照表から永久に消えない。
そこで将来、日銀はETFを市場で(市場を壊さないように配慮しながらも)売却していかねばならないことになる。これについて売却額としては年間3,000億円という考えをしめしたことがかつてあった。そうすると先に述べたように今23.5兆円を保有しているのだから、売却完了までに80年という膨大な期間を要する。
そこで、これはあまりに現実的ではないので、日銀が保有する巨額のETFを他の機関に移し替えることを考えねばならない。つまり、「トバシ」だ。国家機関が真っ昼間に堂々とやってのける「トバシ」である。2002年に特別法に基づいて設立された、銀行等保有株式取得機構がそのモデルだ。
かつて64年オリンピックの年の株式買い取り期間であった、日本共同証券及び「昭和40年不況」のときの株式買い取り機構の証券保有組合と同じ発想のモデルである。「公営トバシ」の受け皿だ。
中央銀行の出口戦略と気軽に言うが、日銀のそれはFRBやECBのそれとは違って自己資本の3倍近い巨額なリスク資産を保有している。日経のコラムには述べていないが、他に400兆円超という自己資本の50倍の国債を持っている。日本の国債は90%以上が国内で保有されているから下がらないのだという迷信があるが、これはあくまでも「迷信」である。
古い話だが、日本国債が暴落したこともある。株価が調整色を強める中で日銀の出口戦略すら語ってはならないときにETFの売却などとトンデモナイことを言うが、いずれは処理しなければならないリスク資産ではあろう。
日銀が出口戦略を開始できる時期は既に過ぎ去ってしまった恐れもある。そうすると19年から20年に訪れると懸念される米景気の後退局面に直面する。
その中でFRBは「利上げ休止」どころではなく「利下げ」へと金融政策を転換するしかない→当然に日米金利差は縮小→円安を支える力の一つたる金利差がなくなるということは円高に直結する→日本の景気後退面に直面しても日銀が打てる金融緩和策は限定される(既に現在がゼロ金利なのだから)。