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ベネズエラを戦禍に巻き込むトランプ政権の思惑が判明、米ロ中の覇権争いでシリア化へ=高島康司

高品質の「グアヤナ・エセキバ」油田と沈黙するマドゥロ大統領

このようなガイアナだが、この国が領有権を主張している「グアヤナ・エセキバ」の原油の品質は極めて高い。サウジアラビアの高品質原油に匹敵する水準だ。これは、軽油で希釈しないと輸送ができない「超重質原油」という最低品質の原油しか産出できないベネズエラの「オリノコ油田」とは大違いだ。

したがって、国家予算の大部分を原油の輸出に依存するベネズエラにとって、「グアヤナ・エセキバ」の油田地帯の領有権を取得することは、今後の国家の運営を左右する大きな問題であることは間違いない。その意味では、マドゥロ政権はガイアナに「グアヤナ・エセキバ」の油田地帯の領有権を引き渡すように強い圧力をかけたとしてもおかしくない。

しかし、マドゥロ政権はガイアナに一応抗議はするものの、強い要求は差し控えている。それというのも、ガイアナを「一帯一路」の経済圏に組み込んだ中国は、同時にベネズエラの最大の支援国でもあるからだ。中国に気兼ねして、ガイアナには強く圧力はかけられない状態にある。

他方中国は、ベネズエラの「オリノコ油田」とガイアナの「グアヤナ・エセキバ」油田地帯の両方を実質的に支配することを狙っている。これが、ベネズエラを支援しながら、「グアヤナ・エセキバ」では同国と対立関係にあるガイアナも支援している中国の意図であろう。

「グアヤナ・エセキバ」油田地帯の支配を狙うトランプ政権

さて、このように見ると、トランプ政権が軍事的な関与をちらつかせてまでも、なぜベネズエラの政変にかかわるのか、そのもうひとつの大きな理由がはっきりと見えてくる。

それはやはり、世界トップレベルの品質を持つ「グアヤナ・エセキバ」の油田地帯を実質的にコントロールすることだろう。

中国とロシアに近いマドゥロ政権を崩壊させ、親米のグアイド政権を樹立させた後、ガイアナに強い圧力をかけて、ベネズエラが「グアヤナ・エセキバ」油田地帯の領有権を奪い取ることなのではないだろうか?

さらに、ベネズエラに親米政権を成立させることで、ガイアナから中国の影響力を排除できる可能性が高まるに違いない。

ロシア軍基地建設の阻止や中国の中南米進出の阻止とともに、「グアヤナ・エセキバ」油田地帯の支配もトランプ政権がベネズエラの政変に関与を強める理由になっている可能性は極めて高い。

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