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ベネズエラを戦禍に巻き込むトランプ政権の思惑が判明、米ロ中の覇権争いでシリア化へ=高島康司

シリアのデジャブ

いまベネズエラの石油産業には、先の「中国海洋石油集団」のほか、同じ中国の「中国石油天然ガス集団」、そしてロシアの最大手の石油会社、「ロスネフチ」、フランスの「トタル」、ノールウエーの「エクイノール」、そしてアメリカの「シェブロン」など、世界の大手の石油会社が関与している。

これを見ると、「オリノコ油田」、ならびに高品質の原油を産出するガイアナの「グアヤナ・エセキバ」油田地帯の支配をめぐって、壮絶な争いが展開しているのが分かる。もちろんこの中心にあるのは、アメリカと中国、そしてロシアとの覇権争いである。

このように、争いの中心がエネルギーの支配に関することであれば、どの国も妥協することはあり得ない。軍事的な関与の可能性もにらみながら、非常に緊張した状態になるのが普通だ。

いまベネズエラで展開しているこのような状況を見ると、ある既視感を覚える。それはシリア内戦である。

当メルマガでも何度か取り上げたが、シリア内戦とはヨーロッパに向けての天然ガスの供給を巡る覇権争いである。いまパリ協定の締結などが後押しとなり、地球温暖化ガスを大量に発生する火力発電から、温暖化ガスの発生量がはるかに少ないガス発電へと急速に移行しつつある。

そのようななか、ロシア産天然ガスへの依存度の高いヨーロッパでは、安全保障上の理由からロシアへの依存度を減らし、ガスの供給先を多様化する動機が存在した。

そうした状況で2つのパイプラインが競合することとなった。ひとつはカタール産の天然ガスをサウジアラビアとシリアを経由し、トルコからヨーロッパに輸送するアメリカのパイプライン案だ。そしてもうひとつは、イラン産の天然ガスをイラクとシリアを経由し、海底からギリシャにガスを輸送するロシア案である。このパイプラインはロシアのコントロール下にあるため、これでロシアはヨーロッパへの天然ガス供給の支配を強化することができる。

2009年、発足間もないアメリカのオバマ政権は、中継地となっているシリアのアサド政権に働きかけ、アメリカのパイプライン案を受け入れるように提案した。だがロシアの同盟国であるアサド政権は、これを拒否した。一方、翌年の2010年、ロシアはイラン産ガスをヨーロッパに輸送するパイプライン案をアサド政権に提示した。アサド政権はこれを受け入れ、2011年には建設が始まった。「フレンドシップパイプライン」である。

そして、この建設が始まった同じ年、シリア内戦が始まった。この内戦は民主化要求運動の拡大から始まったのではなく、外部から入ってきた反政府勢力によって仕掛けられたものであることはいまは証明されている。アメリカとNATOは、ISなどの原理主義勢力を支援してアサド政権を打倒し、自らのパイプライン案を実現しようとした。これがシリア内戦の実態である。

アメリカの思惑通りには行かなかった

だが、アメリカの思うようには進まなかった。

ロシアとイラン、そしてイランに支援されたレバノンの原理主義組織、ヒズボラなどの支援を受け、アサド政権は存続した。反政府勢力のISは、シリアでは実質的に壊滅した。これでロシアとイランがシリアをコントロールすることになったので、ロシアのパイプライン案が実現する見込みが高くなっている。

シリアのこのような状況と、いまのベネズエラをめぐる情勢を比較すると、両者がよく似ていることが分かる。

シリアでは天然ガスのパイプラインの付設とEU諸国のエネルギー支配をめぐるロシアと欧米の争いであったのに対し、ベネズエラはロシアと中国の軍事力の拡大、及び油田の支配をめぐる争いである。どちらも米中ロによる覇権争いの一環である。

シリアではまだ情勢が不安定ではあるものの、アサド政権の存続は規定事実となり、シリア北部に展開しているアメリカ軍も撤退する方向に動いている。今後シリアは、ロシアとイランの影響下に入ることは間違いない。

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