日本人はその神話を捨てない
「土地は永遠に上がり続ける」という神話は事実ではない。
しかし、日本人はその神話を捨てない。もはやそれは宗教レベルにまで到達していると考えてもいい。日本人は政府から金融機関から一般市民まで、全員で「土地こそすべて」の神話を信じる民族である。
もし日本が高度成長期で人口動態的に爆発的な人口増が続いている国なのであれば、私も喜んで「土地神話」の信者になったかもしれない。
しかし、20年も前から少子高齢化が危機的であると警鐘が鳴らされているのにまったく手を打たず、いつまで経ってもデフレを払拭できず、地方がじわじわと死に至っている現状の中で「土地神話」を信じろと言われても無理だ。
「地方が駄目でも都市部は大丈夫」の嘘
「土地はロケーションがすべて」だと言われ、「地方が駄目でも都市部は大丈夫」と考える人もいる。
ロケーションがすべてだというのは正しいが、都市部は大丈夫というのはいささか楽観的過ぎる。今の日本の人口減は都市をも悪影響を与えることになるのは必至であり、現に大都市でもその周辺が人口減と高齢化によって荒んだ状況になりつつある。
不動産を買ったら、うまい具合に価値が上昇していくのではなく、むしろ価値が減少していく可能性が高くなってきている。不動産は「安心できる資産」ではなくなっているのである。
ぎりぎりの生活でもマイホームが欲しい?
さらに普通のサラリーマンも土地建物を買う状況でなくなりつつある。年功序列も終身雇用も消え、事業が傾けばすぐにリストラが始まって会社から放り出される危険な状況の中で30年にも渡る長期ローンを組むことはかなり危険だ。
払い続けられるかどうかの確約が消えている中で、肝心の不動産も地価が上昇せずにキャピタルゲインを手に入れられるかどうか分からない。不動産は他にも維持管理費もかかるうえに固定資産税も取られるわけで、意外にコストがかかる。
それでも不動産を所有したいと思うのであれば、相当な「土地神話」の信者である。それは理屈ではない、というのが分かる。