パナソニックが27年ぶりにドル建て社債を発行したというニュースがありました。そこで今回は、為替の変動によって差異が生じる会計処理について解説します。(『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』柴山政行)
為替相場で生じる差異の処理がいつ行われるのかがポイント
資金使途は負債の返済と一般事業資金
パナソニックは11日、合計で25億ドル(約2,700億円)のドル建て社債を発行すると発表しました。リリースの文面を一部、引用してみましょう。
当社グループは、幅広い投資家層を有する海外市場へのアクセスを確立し、資金調達基盤の多様化および拡充を図りたいと考えております。
資金調達の範囲を広く海外にも求める意図のようですね。調達した資金の使途は、既存負債の返済を含む一般事業資金とのことです。
ドル建て社債は、償還期限が3年・5年・10年のものを3種類発行することになります。3年・5年は10億ドル、10年は5億ドルです。
新聞報道によると、ドル建て社債の発行は1992年の10億ドル以来となるそうです。
ここで会計知識です。外貨建て手で発行された社債が、どのように決算書で表示されるかについて見てみましょう。
■取引例1
A社は、2019年4月1日に、1億ドルの社債を発行した。償還期限は5年とする。発行日の為替相場は110円である。
仕訳
(借)現金預金110億円(貸)社債110億円
※1億ドル×110円=110億円
■取引例2
2020年3月31日。決算日になったので、固定負債として社債を貸借対照表に表示する。決算日の為替相場は105円であった。
仕訳
(借)社債5億円(貸)為替差益5億円
※1億ドル×(110-105)円=5億円…為替相場の変動による社債(負債)の減少と収益の発生。
*****バランスシート
-----------------
(流動資産)*|(流動負債)
現金預金×××|**:
*******|(固定負債)
*******|社債**105億円
*****損益計算書
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売上高・・・・・×××億円
売上原価
-------------
営業利益
販売費及び一般管理費
-------------
営業利益
営業外収益
・為替差益・・・・・5億円
営業外費用
-------------
経常利益
特別利益
特別損失
-------------
税引き前当期純利益
法人税等
-------------
当期純利益
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以上のように、バランスシート(貸借対照表)では、固定負債の区分に計上されます。その金額は、外貨建て金額×決算日の為替相場で計算されます。
そうなると、発生時の為替相場と決算日の為替相場で差異が生じるため、そこから生じる差異の額は、為替相場の変動に伴う損益として、損益計算書の営業外収益または営業外費用として計上されます。
今回の取引例では、社債という負債が減額されるので償還額が少なく済むようになったことから、儲かったということで「為替差益」として営業外収益の区分に表示されます。
以上、パナソニックの外貨建て社債発行とその決算書表示に関する会計知識のおはなしでした。
image by : GuoZhongHua / Shutterstock.com
『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2019年7月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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