2019年、20年の成長要因はない
負債で上がってきた不動産価格の世界的なピークアウトと重なって、2019年、2020年の経済の成長を促す要因は見当たりません。
世界のGDPの成長がIMFの3%台という予想より低下すれば、上記の2万6,000社の潜在不良債権(負債総額では2,000兆円)は膨らみつづけます。銀行の追い貸しが増加するからです。
今回の負債の劣化は、世界的です。日本の資産バブル崩壊(1990年代の10年)、リーマン危機(2008年から2011年)、南欧危機(2011年~12年)のようには国を特定できず、集計も難しい。マネー移動のグローバル化の進展により、危機は世界に分散しているからです。
どうとらえたらいいのか。1929年からの世界恐慌の推移に似ています。これから数年、世界恐慌を再現するというのではない。
中央銀行のマネー増発策は、限定的な幅になった
中央銀行のマネー増発の対策において、違いがあるからです。
しかし、すでにマイナス金利の欧州(ユーロ)と日本には、金融危機のときの通貨増発の余力が乏しい。米国も利下げの余地は、最大でも1%くらいしかない(現在の短期金利は2.01%:10年債は1.67%と逆転している)。
今後の中央銀行の「通貨増発策」は、限定されたものでしょう。リーマン危機のあとのように、20兆ドル(米国、ユーロ、日本、中国の合計:2,100兆円)のような、通貨の緊急増発は難しくなったのです。(換算は、従来の1ドル=110円から、105円に変更しています)
金融危機を通貨の増発、つまり中央銀行からの銀行への貸付増で乗り切っても、不良債権化した負債が大きくなるだけで、いずれは、先送りされたカタストロフが訪れます。負債が増えているからです。
中央銀行のマネー増発は、企業の借り入れによってマネーが補充されて、危機を先送りする効果をもっていますが、危機をなくす機能はないからです。
不良債権というものの性格
不良債権は、借りた企業や金融機関が支払金利より多くの利益を出せるようにならないと解決には向かわない。これが不良債権の本質ですが、MMT論(現代貨幣論)と中央銀行万能論の陰で、忘れられています。
貸付金による資金繰りの助力は一時的です。金利と返済分を借り増した企業が、金利より大きな利益を出せるようにならないときは、銀行の不良債権の増加になるだけだからです。
以上の観点から、大恐慌の推移を振り返ることに意味があるでしょう。
それぞれのイベントに、現代との違いを示していきます。Financial Times紙にも、「大恐慌との類似」を指摘する論が現れはじめました(「データが示す恐怖の夏」:ラナ・フォルーハー氏」。
大手新聞やメディアは、銀行の不良債権を調査して報じることはしません。預金者の不安をあおり、金融を崩壊させる取り付け発生の恐れが生じるからです。危機が事実になったあと、報じます。まだ一部の記事ですが、新聞も金融危機に向かっていることを伝えるように変わってきています。