IPOによって当初200億円以上の資金調達を予定していたステムリムだったが、公募価格が引き下がり3分の1となった。この値付けは妥当だったのでしょうか。(『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』)
投資家の評価は受け入れざるを得ない、ここから出発の決意
ステムリムの冨田会長「調達不調でも計画達成できる」
8月9日に、ステムリム<4599>が東証マザーズに上場した。
初値:930円(公募・売り出し価格▲7%)
終値:951円
⇒ 時価総額は498億円(会社側が当初の仮条件で想定していた平均発行価格で計算した時価総額は約1,500億円)
──当初想定していた株価や時価総額を大幅に下回りました。どう評価しますか。
冨田会長「投資家の評価は受け入れざるを得ない。ここから出発する。現時点で(バイオベンチャーの企業価値を評価する)公式に当てはめるとこうした数字になったということだ。ただ、公募価格を決める際の機関投資家からの評価は、当社が持つ可能性について否定的なものはなかった。再生誘導医薬のリーディングカンパニーとして地歩を固めるために、調達した資金で事業を進める」──仮条件を大幅に下げた理由を教えて下さい。
岡島正恒社長「日本のバイオベンチャー、特に赤字段階で投資できる機関投資家の層が薄かった。機関投資家に一定額を買ってもらわなければならないという状況もあり、株式公開のプロセスも含めて厳しかったと実感している」──仮条件段階での価格レンジはどのような経緯で設定したのですか。
冨田氏「当社側と証券会社側、双方(が妥当だと思う水準)だ」──冨田氏は保有株の売り出しをやめました。
「理由は単純だ。(公開価格を)引き下げた形での仮条件が決まった。中期経営計画の達成に向けて会社が調達する金額が減ってしまいそうなので、会社が売り出す株に振り替えた。今後の売却については現時点では特に考えていない」「当初200億円以上を調達するはずだったが3分の1になった。それでも知恵を使えば中期計画は達成できる。私も70歳でどれだけ役立つか分からないが、死ぬまでという気持ちでお手伝いする」
<株価終値(安値~高値)推移>
8/ 9 951円(900円~1,010円)
8/13 985円(961円~1,055円)
<感想>
赤字のバイオベンチャー企業のIPOに対する、機関投資家の層の薄さが仮条件の大幅な引き下げに繋がった。
上場後の株価は、IPO価格の1,000円を挟んだ値動きになっており、妥当な設定だったと思われる。
同じ証券会社に勤務していた岡島COOの活躍に期待したい。
image by : 株式会社ステムリム 公式サイト
『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』(2019年7月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による