fbpx

日銀は金融政策の維持を決定、メディア各社が報じた「追加緩和の可能性」は正しいのか=久保田博幸

日銀は10月31日の金融政策決定会合で、現在の金融政策の維持を決定した。この際に発表した、新たな政策金利のフォワードガイダンスを読み解いてみます。(『牛さん熊さんの本日の債券』久保田博幸)

※『牛さん熊さんの本日の債券』は、毎営業日の朝と夕方に発行いたします。また、昼にコラムの配信も行ないます。興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

日銀のフォワードガイダンスを読み解く

メディア各社はそろって「将来的な追加緩和の可能性を示唆」と報じた

日銀は10月31日の金融政策決定会合で、現在の金融政策の維持を決定した。この際、新たな政策金利のフォワードガイダンスを決定した。

フォワードガイダンスとは、非伝統的手段が講じられるなか、金融緩和の効果を強く及ぼすために、その緩和をいつまで行うという期間を明示したものとなる(拙著「図解入門ビジネス最新中央銀行と金融政策がよくわかる本」より一部引用)。

決定会合後の公表文には次のように書かれていた。

金融政策決定会合において、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、一段と高まる状況ではないものの、引き続き、注意が必要な情勢にあると判断した。こうした認識を明確にする観点から、以下のとおり、新たな政策金利のフォワードガイダンスを決定した

物価安定の目標に向けたモメンタムについて、今回日銀は別紙での説明も行っているが、とにかく基調としては、一段と高まる状況ではないから今回は現状維持としたものとみられる。ちなみにモメンタムとは方向性や勢いという意味となる。

そのフォワードガイダンスがこちら

日本銀行は、政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。

これを見て最初に感じたことは当日のツイッターに書き込んだので、そのまま転記すると、

どうでも良いことながら、どうして「おそれ」を「惧れ」という漢字を使ったのかな。それはさておき、このガイダンス、モメンタムが損なわれる惧れに注意が必要なくなれば修正するよとも読める。これは追加緩和に前傾姿勢というよりも、引く準備もしている読めなくもないのでは

この解釈に対してメディア各社は、ほぼ揃って、「将来的な追加緩和の可能性を示唆」と報じており、これは違和感を持った。

「それを下回る水準で推移することを想定」という表現を捉えてのものであり、メディアが揃って追加緩和を示唆としていたが、そうなのかと個人的には思った次第。

むしろ、モメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間は続けるよという点のほうにこそ、もう少し注意を向けるべきではなかったか。モメンタムが損なわれる惧れに注意が必要がなくなったらどうするのか、これは出口に向けた動きの可能性をも示唆するものではないかと個人的には捉えたためである。

もちろん、表明文の最後には前回同様に、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じるとあり、やるときはやるよとの姿勢は見せてはいるが、今回のフォワードガイダンスの修正で、そのやる気の姿勢を強めたのかといえば、そうではないと私は解釈している。

そもそも日銀による追加緩和は必要ないし、マーケットもそれを求めてもいない。昨日の東京株式市場や外為市場が日銀の決定会合の動向にほとんど無反応であった。


※『牛さん熊さんの本日の債券』は、毎営業日の朝と夕方に発行いたします。また、昼にコラムの配信も行ないます。興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

【関連】中小型株はいつ買えばいい?活況になったタイミングを読む、出来高増加の変化の見方=山田健彦

【関連】日経平均が一時2万3,000円を突破…株式投資で「今回は違う」という考えが最も危険なワケ=栫井駿介

【関連】S&P500が過去最高値を更新するなか、FOCMは3会合連続で予防的金利引き下げを実施=久保田博幸

image by : Rawpixel.com / Shutterstock.com

牛さん熊さんの本日の債券』2019年11月1日号より
※記事タイトル・リード文・本文見出しはMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

牛さん熊さんの本日の債券

[月額1,100円(税込) 毎週月・火・水・木・金曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
金融サイトの草分け的な存在となっている「債券ディーリングルーム」の人気コンテンツ、「牛さん熊さんの本日の債券」がメルマガとなりました。毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを会話形式にてお伝えします。さらっと読めて、しっかりわかるとの評判をいただいている「牛さん熊さんの本日の債券」をこの機会にぜひ御購読いただければと思います。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー