銀行はリスク融資傾斜
市場金利が世界的に消滅してしまった世界では、少しでも金利の付く商品を求めて「イールド・ハンティング」が進みます。
銀行は貸出金利が低下しているため、市場で資金調達できる大企業向けの貸し出しが困難になります。そこで、市場で資金がとれない信用力の低い企業か、個人向けの融資に傾斜します。
日本では地銀が住宅ローン、アパート・ローンに集中しすぎたため、不動産市場で過熱気味となり、不動産供給が増えすぎて家賃の低下を招き、借り手が家賃収入でローンの返済ができなくなる事態も発生しています。
また、メガバンクなどは米国市場で投資不適格企業向けの「レバレッジド・ローン」を急速に拡大し、リスクが高まっています。
米国市場の「レバレッジド・ローン」残高はすでに6,000億ドルを超えてきましたが、邦銀の伸びが欧米銀行を上回っています。少しでも金利の付く融資に飢えている姿が見て取れます。
ジャンク、CLOに投資せざるを得ない?
有価証券運用でも、日本や欧州では国債の多くがマイナス金利となり、金利収入が得られません。金利を得るには、期間のリスクをとって超長期の債券を購入するか、クレジットの低い債券、例えばジャンク・ボンドなどに投資するしかなくなります。
その点、日本の超長期国債でも十分な金利が得られなくなりました。
このため、投資家はいやでもリスクを取らざるを得なくなりました。かつてサブプライム・ローンを核にした資産担保証券で多くの投資家がやけどを負いましたが、今またこれに似たCLO(ローン担保証券)への投資が増えています。
このCLO、格付けがトリプルAのシニア債もあり、日本の機関投資家はこの高格付け債を購入しているようですが、原債権が低格付け企業向けの貸し出しで、もともと大きなリスクがあります。
日本の機関投資家は積極的にこのCLOを購入し、農林中金、三菱UFJ、ゆうちょ銀行で都合10兆円以上のCLOを保有しています。
金利収入を得ようと思えば、これまで以上に大きなリスクを取らざるを得なくなっています。
日銀は10月の「金融システムレポート」で、こうしたリスクが大きくなっていること、そのリスクに見合ったリターンが得られるのか、不確定との見方を示し、行き過ぎたリスクに警鐘を発しています。