80年代後半に日本でバブルが弾け、その10年後には米国でITバブルが弾け、それから10年もしないうちにリーマン危機が起きました。あれから10年、今静かにまたバブルの様相が広がりつつあります。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年11月6日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
何が「蜂の一刺し」になる?静かにバブルの様相が広がっている…
バブルは繰り返す
80年代後半の日本で盛り上がったバブルが弾けた後も、その10年後には米国でITバブルが膨れ、そして弾け、それから10年もしないうちに米国では不動産バブルが膨らみ、これが弾けてリーマン危機、世界的金融危機が生じました。
あれから10年、今静かにまたバブルの様相が広がりつつあります。
先月27日、フランスの家庭の台所で見つかった中世絵画が、パリのオークションでなんと29億円で落札されました。これはイタリア・ルネッサンス期にフィレンツェ派のチマブーエが描いた「嘲笑われるキリスト」で、これまで中世絵画にはあまり高い値は付きませんでした。この29億円という価格は中世絵画では最高の値と言います。
株式市場でもバブル的な様相が見えるようになりました。
米国では景気の先行き不安が出ても「パウエル・プット」で、つまり金融緩和期待で株が買い上げられ、FRBが利下げ終了を打ち出しても、先週末には強い雇用統計もあってダウもS&Pも最高値を更新しました。
恐怖指数と言われるVIX指数も12台まで低下しています。4日には3指数ともに最高値を更新したので、市場では一段高の期待が高まっています。
東京市場でも5日には一時日経平均が2万3千円を回復、年初来高値を更新しました。決算発表を控え、一部に業績悪化の懸念も伺えますが、業績悪化でも「底入れ」として買い上げる動きも見られます。日本の低成長下でも株価は堅調で、業績悪化でも買う理屈付けに熱心です。
VIXからはまだ楽観論が広がる余地はありますが、景気や企業業績悪化の割には、株式市場の強気が目立つのも事実です。
金利が焼き尽くされた
こうした背景には、世界の金融市場から「金利」が消滅しつつあることも大きな要素になっています。
一時はマイナス金利の国債が世界に17兆ドルもありました。日本ではプラスの金利を得ようと思えば、国債なら超長期しかありません。これとて0.3%台まで低下すると、1%以上の直利が欲しい生保には足りません。
日銀の黒田総裁も、さすがに超長期金利の下がりすぎは好ましくないとの考えを示しました。これで市場も長期、超長期の金利低下を多少修正したのですが、先週の「決定会合」ではフォワード・ガイダンスに長短金利の一段低下の可能性を書きこみ、このためにまた長期金利が低下してしまいました。生保や年金など金融機関の運用は一段と厳しくなりました。
世界的な低成長、低インフレが大きな要因ではありますが、世界の中央銀行が非伝統的な資産の買い入れやマイナス金利政策を打ち出したことも、世界の金利を焼き払う役割を果たしてしまいました。