国民の大事な年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、今回の株安でパフォーマンスを悪化させたうえに、その運用成績の発表を政治的な都合により遅らせようとしています。ひどい話です。(『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』4月18日号)
※このコラムは有料メルマガの一部抜粋です。初月無料の定期購読で、すべてのコンテンツをすぐにご覧いただけます。次号は4月25日配信予定、興味のある方はぜひこの機会に定期購読を!
プロフィール:江守 哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に運用者たる資格なし
株安で悪化、年金の運用成績
安倍政権の肝いりで始まったGPIFの株式中心の運用戦略。中心ではないのかもしれませんが、これまでの株式への投資比率を劇的に引き上げたことを考慮すれば、株式中心といってもよいでしょう。
しかし、今回の株安でその運用パフォーマンスが大きく落ち込んだとの試算がなされているようです。運用成績というのは、どの期間で見るかで変わりますので、いまの株安の時期だけをみると、パフォーマンスが悪化していることは明白です。
これは、投資している対象の多くが、いわゆるパッシブ運用であることに起因します。つまり、上場投資信託(ETF)など株式指数に連動する投信に投資をしていれば、株式指数が下げると必然的に運用パフォーマンスも低下するからです。
これは市場任せの運用ですので、自分ではどうすることもできません。株価が下げると思えば、早めに投資を解約するしかありません。
ここには投資判断という、きわめて重い責任が入りますので、一般的には投資を開始した際に決めた比率を維持しながら、投資を継続するのが一般的です。その結果、相場が上下動しながらも長期的に良い運用成績になっていればよいわけです。
しかし、これも実際にどうなるかはわかりません。あくまで市場任せであることに変わりありません。
人為的に作られた相場の限界
やれることは、投資先の配分を見直すことぐらいです。自分で売り買いのタイミングを決められないので、投資対象の比率を変更することで、多少のパフォーマンス向上は可能です。しかし、これもどの投資対象が上昇するかを見極めるのは困難であり、実際には現実的ではありません。
安倍政権の肝いりで投資比率を変更したため、株価が上がってくれないと困るわけです。ですので、円安・株高誘導に必死になっているのですが、それでも残念な結果にしかなりません。所詮、人為的に作られた相場は長続きしません。
運用成績の発表遅延は意図的か
それ以上に問題なのは、運用成績の公表に関する政府の姿勢です。年度が3月末で終了しているので、本来であれば、発表すべき時期に来ているのですが、運用成績が悪いので、どうやら意図的に発表時期を遅らせているようなのです。
Next: 政治的理由で運用成績を隠すGPIFにプロ運用者の資格なし