日本の家計消費は、消費税の影響が抜けた後も低迷が続いています。この消費の不振は、いわば政府の自作自演の面があります。「永田町発の消費不況」ということです。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
「アベノミクス」の発想を根本的に変えない限り日本経済は沈む
減少し続ける家計消費
日本の家計消費は、消費税引き上げで大きく落ち込みましたが、消費税の影響が抜けた後も低迷が続いています。
その都度、政府は天候のせいを含めて一時的と評価し、雇用賃金が増えているので消費は回復基調、との見方を続けてきました。しかし、現実の家計消費は、安倍政権になって以降も基調としては減少を続けています。
おりしも、円安でも輸出が増えず、野球で言えば「3番、4番」を打つ主力が極度の不振を続けているために、チーム日本は連敗続きです。
14年度は消費税でマイナス成長になった形ですが、15年度も4四半期のうち3四半期がマイナス成長になりそうな状況です。特に、今年1-3月は「うるう年」で1日多く、年率1%強水ぶくれしているはずなのですが。
この景気の足を引っ張っている消費の不振は、一時的でも天候要因でもなく、いわば政府の自作自演の面があります。「永田町発の消費不況」ということです。
それは、政策的に3つのルートで個人消費を圧迫しているためです。つまり、税、社会保険など非消費支出の圧迫で可処分所得が減っていること、年金などの実質減少、マイナス金利の不安による消費抑制です。
実質可処分所得の落ち込み
まず家計の賃金が増えないうえに、税や罰金、社会保険料などの「非消費支出」の増加が圧迫しているために、実際に使える所得としての実質可処分所得は賃金以上に減少しています。
例えば、家計調査から今年2月の勤労者世帯の所得を見ると、実質実収入が前年比2.4%減少したのに対し、非消費支出が3%増加し、実質可処分所得は前年比3.4%の減少となっています。
ひろがる年金への不安
次に、年金が「マクロ経済スライド」で年々実質減少していることです。従って、年金受給世帯の実質所得は減少していることになります。
また、失業保険受給額も減額され、受給資格も以前は月に1回職安に行けばよかったのが「4週間のうちに2件以上の求職活動をする」ことが義務付けられるなど、以前より厳しくなり、受給できない失業者も出ています。
このため、家計調査をみても、「勤労者世帯」よりも年金生活者などを含む「全世帯」の方が弱めになっています。年金受給世帯が今後ますます増え、その実質購買力が年々低下することが、消費のベースを押し下げる形になっています。
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