2024年4月10日に発表された、バリオセキュア株式会社2024年2月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
INDEX
梶浦靖史氏:バリオセキュア株式会社代表取締役社長の梶浦です。どうぞよろしくお願いします。本日は、会社概要、2024年2月期の決算概要、2025年2月期の業績予想、2024年2月期のトピックス、中期成長戦略の順にお話しします。
会社概要
まず、会社概要についてお話しします。バリオセキュア株式会社の創業は、2001年6月21日です。現在は東京都千代田区神田錦町に本社を構え、大阪と福岡に事業所を置いています。
事業の内容としては、大きく2つの柱があります。1つはマネージドセキュリティサービス事業、もう1つがインテグレーションサービス事業です。
ミッションは「インターネットを利用する全ての企業が安心で快適にビジネスを遂行できるよう、日本そして世界へ全力でサービスを提供する」を掲げています。
事業概要 – サービスラインナップ
事業概要です。サービスのラインナップに関してお話しします。先ほど大きく分けて2つの事業があるとお伝えしましたが、まずマネージドセキュリティサービスについてご説明します。
マネージドセキュリティサービスは、リカーリング型(月額課金)の収益モデルです。サービスラインナップは5つそろえています。
1つ目は、統合型インターネットセキュリティサービス(マネージド型)で、インターネットの出入口を守るサービスです。
2つ目は「VarioマネージドLAN/Wi-Fiサービス」です。社内のLANスイッチやWi-Fiのアクセスポイントを守るサービスです。
3つ目はデータバックアップサービスです。もしもの時のデータの保持を提供しています。
4つ目は「Vario-NSS(Network Security Suite)」です。不正端末を発見したり、脆弱性を管理するサービスです。
5つ目の「Vario-EDRサービス」は少ない運用負担でサイバー攻撃の発見と対応を支援するサービスです。
インテグレーションサービスは一時課金型の収益モデルで、サービスラインナップは2つあります。
1つ目は、中小企業向けの統合セキュリティ機器販売(販売型)の事業です。50名以下の企業を中心に売り切り型のUTMを販売しています。
2つ目は、ネットワークインテグレーションサービスです。ネットワーク機器の調達や構築を提供しています。
事業概要 – 業務領域
事業領域についてお話しします。構築から復旧まで、セキュリティ対策の全プロセスをカバーしているところが1つの大きな特徴です。セキュリティフレームワークの特定・防御・検知・対応・復旧のそれぞれのプロセスで当社のサービスをご利用いただけます。
統合型インターネットセキュリティサービスのビジネスモデル
当社の主力事業である、統合型インターネットセキュリティサービスのビジネスモデルについてです。主にインターネット回線に付帯して提供しています。
我々の販売代理店は主に通信キャリアです。通信キャリアが自社のインターネット回線を販売する際に、インターネットセキュリティオプションとして当社のサービスを販売していただいています。
マネージドセキュリティサービス 強力な販売チャネル
先ほどお伝えした通信キャリアやSIer、電力系通信会社など、我々が持つ強力な販売チャネルとの間でOEM契約を締結することで、長期にわたるパートナーシップを構築しています。
市場シェア
市場シェアについてです。ファイアウォール/UTMの運用監視サービス市場において、従業員1,000名未満の企業では当社がトップシェアを持っています。
2024年2月期 決算ハイライト・重要な業績指標
2024年2月期の決算についてご説明します。まず、決算ハイライトです。ストック型売上比率の上昇と低解約率の維持を背景に、売上収益はほぼ計画どおりに進捗しました。特にエンドポイントセキュリティは、前年比85.4パーセント増と大幅に成長しました。
決算ハイライトとしては、売上収益が26億4,000万円で達成率は98.3パーセント、営業利益は5億2,000万円で達成率は114.0パーセント、当期利益は3億4,700万円で達成率は112.7パーセントとなりました。負債比率は23.4パーセントで、前年比マイナス4.5パーセントです。
次に、我々が持つ重要な業績指標についてです。ストック型売上比率は87.4パーセント、前年比プラス2.4パーセントでした。エンドユーザー数は3,091社で、前年度末から比較すると110社増という結果で終わっています。解約率は0.7パーセントで、前年とほぼ同様です。
2024年2月期 業績サマリー
業績サマリーについてです。売上収益は前年比で増加し、ほぼ計画どおりに進捗しました。営業利益・当期利益は、中期経営方針に基づく成長投資により、前年比で減少しました。ただし、採用コストの低減が寄与し、通期予想からは上振れで着地しています。
2024年2月期 営業利益の増減分析 前期比
営業利益の前期比での増減分析です。サービス企画、エンジニア、運用サポートの人員の採用など、中期経営計画に基づく積極的な事業投資で新しいサービスの創出を促進しました。売上原価は引当金の戻し入れで減少しています。営業利益率は19.7パーセントでした。
2024年2月期 営業利益の対予算増減分析
営業利益の対予算増減分析です。事業投資により大幅増員を達成しましたが、期初予想の採用コストの低減および入社時期のずれにより、人件費は期初予想よりも減少しています。その結果、営業利益は期初予想の114.0パーセントで着地しました。
2024年2月期 財政状態
財政状態です。自己資本比率は、継続的な収益の積み上げと計画的な借入返済により、3.8ポイント増加の72.5パーセントになりました。財務の安定性に寄与する結果となっています。
2024年2月期 サービス別業績
サービス別の業績です。マネージドセキュリティサービスは、前年比85.4パーセント増のエンドポイントセキュリティが寄与し、安定的に売上が拡大しています。
インテグレーションサービスは、ネットワーク構築が堅調に推移し、通期計画を超過達成しました。中小企業向けの統合セキュリティ機器販売が減収計画のため、前年比では減収となっています。
マネージドセキュリティサービス概況 ①解約率の推移
マネージドセキュリティサービスの状況をご説明します。1つ目は、解約率の推移です。統合型インターネットセキュリティの解約率は1パーセント以下と、継続して低い水準で推移しています。
マネージドセキュリティサービス概況 ②エンドユーザー企業数の推移
2点目はエンドユーザー企業数の推移です。3,091社と堅調に増加しており、安定的な収益基盤に寄与しています。
マネージドセキュリティサービス概況 ③サイバー脅威対策ソリューションの進展
3点目は、サイバー脅威対策ソリューションの進展についてです。パソコンやサーバー等の情報機器への侵入を検知、拡大を阻止するマルウェア対策、データの保護と復旧を支援するランサムウェア対策が引き続き好調に推移しています。
マルウェア検知・防御サービス「Vario Endpoint Security」の売上収益は、前年比85.4パーセント増で着地しました。ランサムウェア対応型バックアップサービス「Vario Data Protect」の売上収益は、前年比33.7パーセント増で着地しています。
新サービスリリースロードマップ(2024年2月期)
新サービスのリリースロードマップです。「VarioマネージドLAN/Wi-Fi」とサーバー向け脆弱性管理・診断サービスを、昨年度の2024年2月期上期にリリースしました。
下期は、ゼロトラストセキュリティの2025年2月期リリースに向けたプラットフォームの開発にフォーカスしました。第4四半期には、IDaaS事業の開始に向けて、「Vario-NSS」サービスを基盤とした機能強化としてシングルサインオンの追加など、ゼロトラストプラットフォームの第1弾としての開発を完了しています。
IDaaSをゼロトラストパッケージの一部として、2025年2月期第1四半期にリリースする準備を行っています。
脆弱性診断のオプションの追加も、2024年2月期第4四半期に行いました。脆弱性診断の追加オプションとして、お客さまからニーズのあったWebの負荷試験のリリースを行っています。
2025年2月期 業績予想
2025年2月期の業績予想についてご説明します。営業、技術要員の増加やゼロトラストへの投資など、中期的成長に向けた戦略投資を踏まえ、営業利益・当期利益は減益を見込むものの、売上高は4.3パーセントの成長を計画しています。
2025年2月期 サービス別業績予想について
サービス別の業績予想です。当社の主力事業であるマネージドセキュリティサービスは3.0パーセントの成長を予想しており、リカーリング比率も89パーセントまで引き上げることを見込んでいます。
2025年2月期 営業利益の増減分析
営業利益の増減分析です。増減の主な要因について簡単にご説明します。まず、減価償却費の増加で約4,500万円を想定しています。こちらはIDaaS等のゼロトラストサービスの償却開始により、コストが増加したことが要因です。
次に、その他原価の増加で約8,700万円を想定しています。為替変動に伴う材料費の増加、業務委託費の増加が要因となっています。
さらに、人件費の増加で約3,700万円を想定しています。中期成長戦略の実現に向けて、人員の増強を図るためのコスト増を見込んでいます。
加えて、その他販管費で約4,900万円のコスト減を想定しています。支払手数料、業務委託費等の管理費のコスト削減です。
2024年2月期 トピックス①
2024年2月期のトピックスについてです。1つ目は、脆弱性診断、「VarioマネージドLAN/Wi-Fi」の提供開始により、中小企業のセキュリティを網羅的にサポートすることが可能となりました。
脆弱性診断サービスを提供し、お客さまにセキュリティの状況をご理解いただいた上で、必要に応じた当社のセキュリティサービスを展開することができるようになってきています。
2024年2月期 トピックス②
2つ目のトピックスです。現在、HEROZ社の持つAI技術を活用し、ネットワークセキュリティの運用管理業務を合理化するプロジェクトを推進しています。
我々は「AI SoC」プロジェクトと呼んでいます。従来、人が行っていたテクニカルサポートの窓口業務をAI化することで自動化し、サポートの品質、効率改善、セキュリティ教育などへのLLMの本格活用を目的としています。
これらの効果として、コストの削減、品質の向上が期待されています。また、AIを使うことによって作業時間を短縮できると考えており、サービスレベルが向上していくと想定しています。加えて、大量の教師データの活用により、サービス範囲も拡大できると考えています。
現在のプロジェクトの進捗状況については、VSRマネージドセキュリティサービスのサポート窓口にAIを導入しました。その結果、顧客要件の複雑度が自動判別でき、後処理の部分も半自動化できるようになっています。
また、LLMに教師データを投入し、熟練オペレーターの対応品質を再現する検証実験も開始しています。
今後の展望については、フロントサポート業務にもAIを導入し、教育コストの削減と回答品質の向上に活用していきたいと考えています。運用プラットフォームシステムとAIを直結し、顧客特性に応じた必要十分な運用サービスを提供していきたい考えです。
2024年2月期 トピックス③
3つ目のトピックスです。ソリューションサイトを公開し、マーケティング施策を強化しました。これによって直販による需要拡大を目指していこうと考えています。
ネットワークセキュリティビジネス市場の動向
最後に、中期成長戦略についてお話しします。まず、ネットワークセキュリティビジネス市場の動向についてです。在宅勤務等の社会環境の変化、クラウドサービスの利用拡大、サイバー攻撃の高度化により、セキュリティのトレンドが境界防御型(侵入させない)からゼロトラスト(侵入ありき)へと変化してきています。
このような中での2027年度のネットワークセキュリティビジネスの市場規模の予測値は、8,667億円と言われています。そのうち、ゼロトラストセキュリティ製品に関連する市場規模は2,157億円です。
我々が今回参入しようとしているIDaaS市場の規模は210億円、CAGRで17.9パーセントと言われています。すでに参入しているEDR市場は引き続き大きく成長しており、2027年度には510億円まで膨れ、CAGRは22.6パーセントと言われています。
経営課題
当社の経営課題です。外部環境が大きく変わってきていることは先ほどお話ししました。
我々が境界防御型でビジネスを行ってきた市場の成長率は、年率1.3パーセントほどになってくると予測されています。先ほどお伝えしたとおり、「侵入させない」から「侵入ありき」の多層防御のゼロトラストセキュリティ対策が求められてきており、このニーズは一層高まる見込みです。
一方で内部環境としては、当社は中小企業向けのアプライアンス型UTM製品市場で安定して成長してきました。しかし、直近では新規の設置台数はほぼ横ばいという状況です。
当社の主力サービスは「侵入させない」を目的とした境界防御型の対策でした。一方で、マルウェア検知・防御の「Vario Endpoint Security」やランサムウェア対応型バックアップ「Vario Data Protect」は、2桁以上の成長実績を残しています。
これらの外部環境や内部環境を考慮して、「強みの深化」「成長市場への投資」「戦略的な顧客開拓」の実行を行うべきだと考え、これら3点を解決すべき経営課題として位置づけています。
中期経営方針
中期経営方針です。中長期的な事業投資により、「マネージドサービスの対応領域拡大・競争力強化」「成長セキュリティ市場への参入」「既存販売網と異なる新規営業体制の強化」の3点を推進していきます。
1点目の「マネージドサービスの対応領域拡大・競争力強化」では、ゲートウェイセキュリティに加え、LANからクラウドまでの対応領域の拡大、さらに他社商材の活用による競争力の強化を図っています。
また、AIの活用による次世代の運用基盤を構築し、安定的な収益基盤であるマネージドサービスの運用効率を強化しています。
2点目の「成長セキュリティ市場への参入」に関しては、既存サービスを活かしたゼロトラストセキュリティ領域へしっかりと参入していく準備を進めています。
3点目の「既存販売網と異なる新規営業体制の強化」では、従来の安定的な代理店経由を中心とする販売体制に加え、オンラインマーケティングやインサイドセールスへの積極投資によって強力なダイレクトセールスの体制を構築しているところです。
中期経営目標
中期経営目標です。2027年2月期に売上収益37億6,300万円、営業利益9億2,000万円の実現を中期目標として設定しています。今後のゼロトラストセキュリティ商材の投入により、これらの実現を目指していく考えです。
現在、マネージドセキュリティサービスの売上収益は全体の87パーセントですが、2027年2月期には94.3パーセントまで引き上げたいと考えています。
中計事業展開方針の進捗
中計事業展開方針の進捗です。3つの方針の進捗をご報告します。1点目の「マネージドサービスの対応領域拡大・競争力強化」に関しては、脆弱性診断のオプションのリリースや、新規代理店の開拓を行いました。マネージドサービスの新規代理店は新たに8社を追加しています。
2点目の「成長セキュリティ市場への参入」では、Cloud管理機能、SSO機能の開発を終えました。既存商材と併せてオンプレ・クラウド・SaaSを横断的に運用するゼロトラストMSSのリリースに向けて準備を行っています。
3点目の「既存販売網と異なる新規営業体制の強化」に関しては、イベント等に積極的に出店し、マーケティングリードが6倍に増えています。
また、インサイドセールスの強化によって、案件リード数が20パーセント増加しました。先ほどお伝えしたとおり、ソリューションサイトの公開や、新たにMA(マーケティングオートメーション)の導入も行っています。
中堅・中小企業向けのゼロトラスト展開について
ここからは、ゼロトラストに関してお話しします。まず、中堅・中小企業向けのゼロトラストの展開についてです。クラウドからオフィス環境まで、中堅・中小企業の規模に合ったセキュリティサービスを提供していきたいと考えています。
今後はリーズナブルな価格帯でセキュリティの担保と運用保守の省力化を図り、最低限の構成でゼロトラストセキュリティを実現するマネージドサービス「Vario Ultimate ZERO」を提供していきます。
今後の事業展開について
今後の事業展開についてです。当社のメインのお客さまは中堅・中小企業のSMEが中心であるものの、伝統的なセキュリティ業界の特性から、我々もお客さまが各サービスを組み合わせて自社のセキュリティを担保するというスタイルで販売を行っていました。
大手エンタープライズのお客さまは自社でセキュリティに関する知見を有しているため、従来どおりのかたちでも問題ないと考えています。
ただし、我々がターゲットとしているお客さまは、自社でセキュリティに関する知見を十分に有することができないという前提があると我々は認識しています。そのため、セキュリティを統合的に担保していくセキュリティBPOベンダーとして、我々のサービスをお客さまに提供していきたいと考えています。
PC等の端末や社内のネットワークを守ったり、アカウントの管理やお客さまが使用しているファイルを守ることに加え、我々のようなセキュリティのプロによる運用管理のサービスを追加し、セキュリティワークをまとめて提供することを目指していきたいと考えています。
今後のゼロトラスト・サービスロードマップ
今後のゼロトラストのサービスロードマップです。2025年2月期第2四半期には「Vario Ultimate ZERO」の「Start Pack」「Standard Pack」の2つのリリースを予定しています。
2026年2月期の第2四半期から第3四半期にかけては、「Vario Ultimate ZERO」の「Enterprise Pack」をリリースしていく予定です。「Enterprise Pack」はクラウドネイティブのサービスがメインとなってくるため、このようなロードマップを引いて現在準備しています。
以上が2024年2月期の決算説明となります。長い間ご清聴いただき、どうもありがとうございました。
よくいただくご質問について
<質問1>
質問:バリオセキュアの強みを教えてください。
回答:当社は、ネットワークセキュリティの導入から管理、運用・保守までをワンストップで提供し、ユーザーから初期費用及び定額の月額費用を徴収するストック型の「リカーリングビジネスモデル」により、安定的な収益基盤を構築しており、独自のビジネスモデルが強みです。
<質問2>
質問:マネージドサービスの拡大は、人材も必要となり、売り上げは伸びても利益が伸びないのではないでしょうか?
回答:当社では運用保守サービスにシステムの自動化及びAIを活用することで変動費を固定費化し、コストがリニアに上昇しないようコントロールに努めています。
<質問3>
質問:中計をどのように達成していくのでしょうか?
回答:既存の統合型インターネットセキュリティの価値提供と、お客さまの課題を解決するクロスセルによる販売増に加え、新規サービスによる新しい需要の取り込み(Vario Ultimate Zero参照)により達成していく予定です。
<質問4>
質問:PBR1倍割れの対策は行わないのですか?
回答:中計を通して目標利益を達成していくとともに、動画配信や個人投資家向けセミナーへの参加等により、IRを積極的に行うことでPERを高めていく予定です。