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無人販売店「餃子の雪松」が閉店ラッシュ?コロナ禍に倍々ゲームで店舗数を増やすも失速中…“ニンニクが主張”する同餃子の魅力も仇に?

餃子の無人販売店として知られる「餃子の雪松」が、急成長から一転して“閉店ラッシュ”と一部メディアが伝え、大きな波紋を呼んでいるようだ。

報道によれば、22年には全国400か所以上への出店を実現させ、経営陣からは「23年内に1,000か所を目指す」との声もあがっていたようなのだが、24年6月時点の店舗数は374店舗に留まり、ピーク期の10%ほどが閉店を余儀なくされたとのこと。

国内最大手の某信用調査会社によれば、ギョーザ無人販売店全体の話として、その店舗数はコロナ禍で爆発的に増えたものの、23年にはすでに出店ペースは鈍化の傾向だったという。

ただ、冷凍食品自体への需要は依然高く、さらに過去に一過性のブームとなった「高級食パン」「タピオカ」「白いたい焼き」とは異なり、餃子はいわば“日常食”であることから、今後もそこまでニーズが急落するとは思えない……といった見立てのようだ。

一時ブームの唐揚げ店よりも低い参入障壁

2018年、埼玉県入間市に一号店がオープンした「餃子の雪松」は、2021年に1日100万個以上の生産能力を有する自社工場を建設したことを契機に、出店ペースが飛躍的にアップし、同年には200店舗、さらに翌年の2022年には400店舗達成と、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いに。

餃子の無人販売といえば、店舗スペースに冷凍庫とお金を入れる箱と防犯カメラさえ準備すれば開店可能で、小型店なら開店資金は100万円程度だということで、以前流行った唐揚げ店よりも参入障壁が低そうな業態。さらにコロナ禍当時における「事業再構築補助金」制度の存在も、出店ラッシュを大いに後押ししていたようだ。

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しかしながら、それがここに来て“閉店ラッシュ”という表現はちょっと大げさだとはいえ、雪松に関しては実際のところ店舗数を減らしているということで、SNS上でも様々な見解が飛び交っているところ。そんななかでも、とりわけ目につくのが「結局味の素が一番」といった声である。

冷凍餃子が盛り上がっているのは、何も今回取沙汰されている無人販売店に限った話でなく、スーパー等の冷凍食品売り場においても、各メーカーが激しく争っているジャンル。

そのなかでももっとも売れているというのが、他ならぬ味の素冷凍食品の「ギョーザ」で、年間で1億パックを売り上げるという、いわば同ジャンルにおける“巨人”。また、全国に中華料理チェーン「大阪王将」を展開するイートアンドフーズの食品部門が手掛ける「羽根つき餃子」も、近年人気がかなり高まっているようだ。

各社間の競争の激化により、近年そのクオリティが格段にあがっているという冷凍食品コーナーの冷凍餃子とも、「雪松の餃子」は当然しのぎを削っているわけだが、ちなみに価格のほうはというと、味の素「ギョーザ」が12個入りで税込だいたい250円で、イートアンドフーズ「羽根つき餃子」は同じく12個入りで税込360円程度。

対する「雪松の餃子」は1袋36個入りのものが1,000円ということで、ことさら高級価格帯というわけではないのだが、それでも販売実績50年以上を誇り、多くの人に馴染みある味わいであるうえに、雪松よりも若干手ごろな価格である味の素の「ギョーザ」に、結局は回帰していくといった流れがあるようなのだ。

ニンニクの利いた餃子がコロナ禍に人気を博すも…

いっぽうで「雪松の餃子」の味の評価に関してだが、人それぞれに好みがあるなかで概ね美味しいとの評判が多いのだが、そんななかで「雪松の餃子」の特徴として多くあがっているのが「ニンニクが利いている」といった声。

群馬県水上の温泉街に存在する、老舗のお食事処「雪松」の名物だという餃子を再現した「雪松の餃子」だが、その中身の具は肉が全体の1%程度で、ニンニクや生姜が多めな野菜中心の餃子だという。それゆえニンニクの風味が主張するという声も頷けるところで、それがいわば「雪松の餃子」の個性ともいえる。

しかしながら、「雪松の餃子」が急成長を遂げたコロナ禍のご時世では、他人と会う機会も少なく、さらに外出時にはマスク着用が必須だったわけだが、23年5月の“5類移行”を契機に世の中がすっかり元の生活に戻ったことで、次の日の臭いが気になるニンニク強めの餃子は、忌避されるとまでは言わないものの、選ばれる機会が減っていく……といった流れは大いに考えられるところ。

ちなみに「雪松の餃子」の無人販売店、ならびに通信販売で売られている餃子は、同社曰く“昭和十五年より続くこだわりの雪松餃子”のみ。例えば“ニンニク抜き”など、あれこれと種類を増やさず1種類で勝負しているというのは、それこそ商品への並々ならぬこだわりを感じさせ、ある意味での説得力になっていたわけだが、その反面で「選択肢がない」という“仇”にもなっているというのが今の状況のようである。

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