2025年12月1日に発表された、株式会社JPMC2025年12月期第3四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
目次
武藤英明氏:グループCEO代表取締役社長執行役員の武藤英明です。本日は社内向けに第3四半期の概要をご説明いたします。まずは業績です。
2025年第3四半期業績

業績はご覧のとおりですが、売上は創業来24期連続の増収で437億円となりました。営業利益は採算性を重視した営業戦略により利益率が上昇したことから前期比11.4パーセント増の21億7,000万円となりました。第4四半期にはシステム開発の費用や、保有物件の収益性強化を目的とした大規模修繕費用が発生するため通期業績予想は営業利益25.5億円で据え置いています。
株主還元については期末配当の2円増配を決定し、年間で60円予定としています。前期比9.1パーセント増と高い水準の増加率となっています。
運用戸数と新規申込戸数は三角の評価としています。運用戸数は採算性を重視した戦略を採用し、ストックの良質化を優先した結果、前期比でわずかに減少しています。新規申込戸数は前期比では34.9パーセント増の成長を実現しましたが、計画対比ではわずかに未達となっています。
ROEに関しては20パーセントを目指して順調に推移しています。DOEも14年連続で10パーセント超と高水準を維持する予定です。
主な経営指標の推移

主要な指標のこれまでの推移です。当社のストックビジネスの強みを活かし、売上高、利益は安定的に成長してきました。2011年のJASDAQ上場以来、運用戸数、売上高、売上総利益、営業利益はおおむね右肩上がりの成長を続けています。
株主還元 1株当たり配当金の推移

1株当たり配当金の推移です。2025年12月期は6期連続の増配を予定しています。期末配当の2円増配により1株当たり60円となる予定です。ストックビジネスの強みを活かし累進配当を実現しています。
株主還元 株主還元総額の推移

自社株買いも含めた株主還元総額の推移です。ストックビジネスの安定的な成長に伴い株主還元総額も着実に成長しています。
さまざまな株主の方から「自社株買いしないの?」と頻繁にご質問をいただきます。これまでに、合計4回の自社株買いを実施しています。
なお、配当金総額は2019年に一度減少していますが、それ以降は2025年までで6期連続増加となります。
株主還元 DOEの推移

DOEは、現在注目されている数字です。ROEと配当性向を掛け合わせ、株主のためにどれだけ努力しているかを表現しています。
スライドには「資本効率と株主還元のバランスを適切にコントロールし、」と記載されていますが、当社のDOEは2012年から13年連続で10パーセントを超えています。非常に優秀な数値を示している企業であることを、ご理解いただければと思います。
賃貸住宅マーケット規模

ビジネスモデルについてですが、我々の成長はまだ止まる段階にはありません。
当社のシェアは11万戸にすぎませんが、市場全体では2,389万戸が存在し、過去5年間では毎年およそ33万戸から38万戸の新築物件が供給されており、市場は拡大を続けています。
ご注目いただきたいのは、日本全体で年間推計15兆円の家賃収入がある点です。この数字は非常に大きく、賃貸業界全体が巨大な産業であることを示している一方、マンションデベロッパーなどと比較すると、賃貸業界の競合他社は少ないという印象を持っています。
トップは大東建託、2位はレオパレス、3位は積水ハウスです。我々は7位につけており、市場には十分な成長性があると感じています。
マーケットの展望 入居者サイド(需要)

注目しなくてはならないのは、従来の方法ではうまくいかないという点です。単身者とカップル世帯が約993万世帯増加している一方、ファミリー世帯は約300万世帯ずつ減少している状況であり、全人口も減少しています。
さまざまな統計がありますが、2055年には人口が9,700万人や9,200万人になると予測されています。統計にはばらつきがあるものの、今後減少することは間違いありません。
一方、増加が予測されているのは2040年までに1.5倍となる高齢者人口であり、2035年には高齢者世帯の約4割を超えるとされています。さらに、そのうちの37.7パーセントが独居であることが示されています。
この予測に伴い、シニアハウス事業部や「ふるさぽ事業」の推進、さらには物件を1Kワンルームから1LDKに切り替えることの重要性が高まっていると考えています。
また、「少子高齢化」とよく言われますが、少子化と高齢化は別の問題です。少子化、高齢化、晩婚化、結婚しない層の拡大、離婚率の増加など、さまざまな社会的変化が絡み合っている状況です。
運用戸数ランキング

業界の動向という点では、賃貸住宅メーカーが賃貸住宅業界を牽引してきました。各社エリアや物件の規模などによる差はあるものの、「建てる」会社とリレーションのある会社が業界を牽引しているという構造に変化はありません。
当社の特長は既存物件の運用ができる点です。独立系で既存物件をメインに運用戸数を増やしていけるのはこのランキングの中では当社だけです。当社が早くこのベスト5に入ることは業界にとってもエポックメイキングとなります。
マーケットの展望 オーナーサイド(供給)

昨年は、34万2,000戸程度の新築が建設されました。2018年時点の数値ですが、世の中の賃貸物件の空室率は約21.4パーセントです。物件は新築で供給され続けているため、この数字が改善している見込みは、ほとんどないと考えています。
また、プレハブメーカーが活躍してきた地域では入居率が低い傾向があります。入居率は人口の多寡には関係がなく、大阪では25.4パーセントが空室、兵庫では22.1パーセントが空室、東京でも19パーセントの空室があります。一番空室率が低い沖縄でも、17パーセントの空室があります。
持続可能な賃貸経営をサポートするJPMC

そのような中で、貸し出し対象としてフリーターやフリーランスの方々、外国人、高齢者、ペットと住みたい方など、4つの層が今後重要なマーケットとなります。これらの層を開拓していく必要があるというのは、当社の以前からの持論でもあります。
中でも高齢者については適合高専賃の時代から参入しており、現在では7,000戸弱の運用を行っています。外国人入居については、現在テストマーケティングの段階ですが、フォースバレー・コンシェルジュ社やYOLO JAPAN社と提携し、就労支援に加えて部屋の紹介を進めています。
また、入居者に対する入居時の付帯サービスを提供するのが、滞納保証のJPMCファイナンス社と、家財保険のみらい少額短期保険社です。これらは自社で100パーセントコントロール下にあるため、今後も積極的に活用して導入率を上げていきたいと考えています。
このようなトータルサービスによって賃貸をワンストップで提供するのが、当社のビジネスモデルです。
当社の強み① 全国で既存物件のサブリースが可能

北海道の北見から沖縄の石垣島まで、47都道府県すべてで展開している会社は当社のみです。全国で事業を展開することが当社にとってのアドバンテージだと考えています。
当社の強み② パートナー制度で効率的な運用を実現

パートナー企業が全国に我々のチャンネルを持っていることが、販管費を多くかけずに済んでいる要因となっています。一時期の販管費率は6パーセントでしたが、システム投資や人的資本投資を進めた結果、現在は8パーセント強に上昇しています。目標の3パーセントにはまだ遠いものの、非常に効率的な会社であると考えています。
これを支えているのが建設600社、不動産700社、介護100社の合計1,400社のパートナー企業です。全国でこれらの企業にご協力いただいているおかげで我々は事業所や支店を設ける必要がなく、販管費を抑えられています。
パートナー企業との協力が重要であり、コンサルタントやエリアPMの方々が非常に重要な役割を果たしていると認識しています。
当社の強み③ 金融機関との提携

金融機関は1行減少していますが、163行もの金融機関と、20年ほどの歴史しかない当社が提携しているというケースは非常に稀だと思います。
持続的成長に対する考え方

我々のビジネスは一見すると複雑ですが、シンプルに考えればやることは2つです。
スライドの緑色の矢印が示すように、付加価値を上げることが1つ目の柱です。例えば、家財保険や滞納保証を入居者に利用していただくことで収益が生まれます。また、JPMCエージェンシー社の法人入居斡旋も、この付加価値向上に含まれます。
2つ目は、スマートホーム化です。これによって我々にもコミッションが入るだけでなく、入居率が向上し、家賃収入も増加します。現在の家賃を上げていく局面において、スマートホームの「HOMETACT」は大きく貢献しています。
また、スーパーリユースの「古い物件をリニューアル、リフォーム、リノベーションすることによって付加価値アップしていきましょう」という考えも、付加価値を上げる要素となっています。
現在足りていないのは、スライドのオレンジ色で示したエリアです。プロパティマネジメント事業は入居率が好調です。これから戸数が増加していく局面でも、1万2,000戸や1万5,000戸など過去のような規模で戸数を伸ばしていけば、現在の入居率を維持することは難しいかもしれませんが、よりバランスの取れた成長が期待できます。
スライドのうち、現在は緑色のエリアが強く、オレンジ色のエリアが弱い状態です。今後はプラットフォームの拡大を進めていきたいと考えています。社内ではオレンジ色のラインを伸ばしていく方針を掲げたことで、みなさまの意識も大きく変わってきています。
営業には戸数アップに集中いただき、PMにもサポートに集中していただきたいと考えています。このオレンジ色のラインの成長は我々の生命線でもあるということです。
M&A 実積

M&Aの実績についてお話しします。今まで4社M&Aを行っており、そのいずれもがM&A以前に比べて利益成長を果たしています。JPMCシンエイ社で確立した管理会社のM&Aメソッドを活かして運用戸数増加に貢献するM&Aを進めていきたいと思っています。
M&Aの対象戸数

JP(管理会社であるパートナー)が管理する物件は、78万戸にのぼります。このうちの5パーセントにあたる3万9,000戸を獲得できれば、短期間で大幅な伸長が見込めます。
また、プレハブメーカー以外である他の管理会社が管理していると推定される物件は222万戸あります。こちらも、このうちわずか1パーセントを獲得するだけで2万戸です。これらを合算すると、約6万戸に達します。
スマートホーム領域への参入

当社では協力会社とのパートナーシップで20年前からブロードバンド無料物件化を推進してきました。
ただ、現在ではそれが当たり前となっています。いずれはスマートホームの「HOMETACT」も当たり前となるでしょうから、今が推進のタイミングです。10年後や15年後にはまた新たなデバイスが登場してくると思うので、それを付加価値としていかなければいけません。
このような付加価値の高い商品を導入し、家賃をストレッチする施策を進めます。これまで当社業界では、入居率が悪化すると「家賃下げましょう」の一辺倒でした。しかし、家賃を引き上げてでも付加価値を向上させることに挑戦しなければ、部材が高騰している現状において、オーナーさまの利回りが維持できなくなります。利回りが維持できなければ、私たちの業界に未来はありません。だからこそ家賃をストレッチする必要があり、これも経済の成長につながります。
今後は、収入を上げて物価上昇に対応できる社会が必要だと思います。
先日京都に行った際、ラミネート加工された英語版メニューと日本語版メニューの値段が異なっていることに気がつきました。英語メニューで注文しそうになりましたが、裏面を確認すると日本語メニューは約3分の2程度の値段でした。このような問題についても、対応していく必要があると感じました。
いわば「ただ金を取ればいい」というような問題ではありません。ここには「外国の方をお迎えするにはインフラ整備やコストがかかるため、付加価値をつけて販売し、その分消費税もかかります」といった正当な理由がある合理的な価格設定があり、ただ利益を得たいというものではないのです。
賃貸住宅業界に訪れる劇的な変化

近未来の部屋探しについて、特に新たに言及することはないかと思います。間違いなく、今後5年から10年のうちに、すべての部屋探しがスマートフォンで行われるようになるでしょう。
生意気かもしれませんが、これは私自身が「HOME’S」を立ち上げた時から始めてきたことです。現在では、部屋探しの96.6パーセントがスマートフォンを通じて行われています。
一方、その後のプロセスはほとんど変わっていません。不動産屋に行き、不動産屋の車で内見に向かい、カウンターに戻って契約を締結するという流れです。とはいえ、今後は新型コロナウイルスの影響もあり、非接触型の契約形態が増えると予想されます。
さらに「スマート仲介」による仕組みを導入すれば、スマートフォンで物件を探し、LINEで連絡し、「Google マップ」を使って現地に向かうことができます。
到着後はスマートキーで解錠してセルフ内見を行い、自宅に戻れば「ドキュサイン」で契約が完了します。その後はITを活用した重要事項説明を受け、手持ちのクレジットカードで初期費用を支払うことが可能です。
つまり、手間がほとんどかかりません。この利便性の高さと、若者や今後社会の中心となる人々のITリテラシーを考慮すると、このような形態が主流になることは間違いないと考えており、これらに備えていかなければなりません。
賃貸住宅業界に訪れる劇的な変化 「スマート仲介」時代の到来で仲介は不要に

今後は、どのように推進するかを考えなければなりません。まずはスマートキーを普及させなければ「スマート仲介」は実現できません。
スマートキーだけでは、付加価値が上がらないため、家賃を上げることはできません。しかし、スマートホームであれば付加価値があります。スマートホームには、いずれにしてもスマートキーは必須であるため、まずはこちらを推進したいと考えています。
JPMCまとめ

ストックビジネスで安定成長を実現し、それによる累進配当と安定配当により、バリュー銘柄となっています。また、証券コードおよび社有車の番号は「3276」です。「累進配当、実になる『みになる』と覚えてください」と、お伝えしています。
