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ステップ Research Memo(9):横浜・川崎エリアでシェアを拡大、今後も増収増益と堅実な成長を目指す

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■ステップ<9795>の今後の見通し

2. 今後の成長戦略
(1) 小中学生部門
同社は神奈川県内に特化した学習塾であり、中長期的に成長を続けるための戦略として、生徒数の増加が見込まれる横浜・川崎エリアでのシェア拡大を最重要課題の1つとして取り組んできた。横浜市内で公立トップ校と呼ばれる9校合計の入試合格者数で見ると、2025年春は前年比13名増の982名と過去最高を更新するなど着々とシェアを拡大している。県内最難関校とされる横浜翠嵐高校の合格者数は、臨海セミナーに一時的に逆転されたが、逆に川崎エリアの最難関校である多摩高校では臨海セミナーからトップの地位を奪取したことで(多摩高校の合格者数は前年比54名増の113名と大幅躍進した)、川崎エリアでのブランド力は一段と上昇したものと思われる。川崎エリアへの出校をここ数年、続けてきた効果が顕在化したと見られ、今後も川崎エリアでのシェア拡大が期待される。また、横浜翠嵐でもいずれは他塾を圧倒する合格者数を獲得することを目標としている。志望校の選択は生徒や保護者の意思に委ねているため、同社でコントロールできるものではないが、今までの取り組みを継続していくことで早晩、横浜翠嵐でもトップを奪取できるものと弊社では見ている。2026年以降も横浜・川崎エリアに新規スクールを開校し生徒数を増やす方針であることから、横浜・川崎エリアのトップ校に対する合格者数も伸び続ける可能性が高いと弊社では見ている。

神奈川県内の公立中学校に通う生徒数のうちステップ生の占める比率は2025年10月時点で11.8%(前年同期比0.3ポイント上昇)、このうち横浜市で10.5%(同0.5ポイント上昇)、川崎市で6.4%(同0.6ポイント上昇)、横浜・川崎以外の地域で14.8%(同0.1ポイント上昇)となっており、横浜・川崎エリアでのシェアが着実に上昇していることが窺える。一方、2030年までの人口予測によれば横浜市の北部エリアと川崎市で増加傾向が続くものの、県西部エリアや横須賀市は減少傾向が続く見通しとなっており、横浜・川崎エリアでスクール数を増やしてシェアを拡大する戦略は理にかなっていると言える。

同社は当面の目標として、横浜・川崎エリアでのSTEP生のシェアをそのほかの地域と同水準となる15%程度まで引き上げることを掲げている。今後の各エリアの人口推移をもとに、15%程度のシェアを実現するのに必要となるスクール数は、横浜エリアで19スクール、川崎エリアで13スクール前後になると同社では試算している(1スクール150名で試算)。年間3校ペースで出校したとしても10年程度かかる計算となる。10年かけて達成したとすると、生徒数の増加ペースは年率3%となる。主要都市部の生徒数シェアを見ると、本社を置く藤沢市で26.4%となっているほか鎌倉市で22.2%、海老名市で21.2%と15%を上回る地域も複数あることから、長期的には横浜・川崎エリアでも15%以上のシェアを獲得する可能性は十分にあると弊社では見ている。開校ペースに関しては、教師の育成と条件に合う不動産物件が出てくるかがカギを握る。横浜・川崎エリアでも賃料の上昇が続いていることから、物件の探索は難しい状況ではあるが、競合塾が撤退したり金融機関が営業拠点の統廃合を進めたりしている状況もあり、タイミング次第となろう。

一方、小学生部門については引き続き「楽しく学ぶ」ことができる学習塾という同社の特徴であり強みを、さらに磨いていくことで生徒数の増加につなげていく考えだ。首都圏では私立中学校受験が過熱化するなかで、公立中学進学者が安心して通える塾(中学進学後を見越したプラスαの充実した学習を受講することが可能な塾)として、楽しく学べる環境づくりを教師も意識しながら取り組むことで、生徒数の増加につなげる。

(2) 高校生部門
高校生部門では、授業の質を維持しながらスクールを増やす方針のため、新規開校は教師のリソースを確保してからとなる。現役高校生で難関大学の合格を目指す学生にとって「大学受験STEP」は、トップレベルのブランド力を有するまでになっており、新規校舎の開設や移転・増床が進めば自ずと生徒数も増加するものと予想される。

大学受験においては、指定校推薦・総合型選抜制度を利用する生徒が増加傾向にあり※、受験学年の生徒の退塾タイミングが早期化する傾向にあることがリスク要因ではあるが、同社においては一般入試を選択する生徒が全体の約76%と圧倒的に多いため、マイナスの影響はほとんど受けておらず、今後も大きな影響は受けないものと弊社では見ている。

※ 2023年度の選抜方法別入学者の割合で見ると、国公立大学では年内入試(総合型、学校推薦型)の割合が21.2%、私立大学では58.7%を占めた。

(3) 学童保育部門
「STEPキッズ」は、知的好奇心を育む豊富なプログラム(15種類)を差別化戦略として、今後も教室の拡大に必要となる人的リソースや組織体制を構築しながら堅実に教室数を増やしていく方針だ。学童保育に必要とされる人材は学習塾の教師とは異なる部分も多く、子どもの可能性や潜在能力をうまく引き出す力が求められる。同社は「STEP」の女性講師で結婚後に育児休職から復帰する人材など、学童保育部門の適性に合った人材を育成する研修カリキュラムを作り、こうしたリソースの拡充に取り組んでいく。

教室展開については、近隣に小中学生部門のスクールがあり、かつ学童サービスのニーズが強い地域に開校していくことが予想される。近隣にSTEPスクールがあることで、学習プログラムに応じてスクールの教師や教師経験者がサポートに入るなど効率的な運営が可能となるほか、マーケティング面においても既にSTEPのブランドが確立していることから、広告宣伝費が少なく済み効率的なためだ。生徒1人当たりの売上単価は約50万円、1教室当たりの定員数は120名前後を目安に3年で収益化するビジネスモデルで展開する。政府も子育て支援策については充実させていく方針を打ち出しており、学童保育部門の成長を後押しするものと期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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