6月は見送りでも、7月利上げは譲らないアメリカ
このバランスからすると、米国が利上げの脅しをかけやすいのですが、米国の事情として、6月23日に英国がEU離脱の是非を問う国民投票を行い、その結果いかんで市場が不安定になるリスクがあり、これを見極めたいこと。また5月の米国雇用が予想外に伸び悩み、市場が6月利上げはないと見始めたことなどから、自ら利上げを留保したい状況になっています。
中国が米国の足元を見れば、6月利上げの見送りだけでは簡単に飲めないでしょうが、ネオコンが優勢となった今の米国に、7月も利上げを見送らせることはかなり厳しいと見られ、中国自体、習主席が改革に消極的になっていて、これと言ったカードを米国に提示しにくくなっています。
結局、米国は中国の不良債権ビジネスに米国企業が関われるようにするのと引き換えに、6月利上げを見送るまでは良いとしても、7月利上げの見送りまでは譲歩しないと見られます。
すでに不良債権ビジネスには米国企業が関わるようになっているので、後は不良債権処理を促進させるべく、中国に圧力をかけると見られます。
中国経済に大打撃を与える米利上げ
中国の不良債権は、公表上は銀行資産の1%台にとどまっていることになっていますが、当局も足元で急増していることを認めています。
民間機関の推計では、現実の不良債権比率は何倍にもなり、中には実際の不良債権は公表値の10倍以上ある、との試算もあります。これにKKRやゴールドマンなどが触手を伸ばしていると言います。
米国が利上げに出れば、結果として中国からの資本流出が進み、経済、金融の混乱が進み、銀行の不良債権はさらに高まります。
FRBの利上げは、直接金融機関に付利金利の引き上げで利益になるばかりか、中国ビジネスでの商機拡大にもなります。米国財務省、FRBは金融資本のロビイスト機能を果たしているとも言えます。
『マンさんの経済あらかると』(2016年6月6日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。