復活の「原子力ムラ」 3・11の教訓を一顧だにせぬ原発再稼働の内幕=新恭

“原子力ムラ”に完全支配された原子力安全・保安院をつぶして新たに誕生した「原子力規制委員会」ですが、体質は旧態依然のようです。関西電力が算定した大飯原発の「地震動」の評価について、「低く見積もり過ぎ」とした地震学の権威の新知見を、結論ありきの理屈で全否定。これについてメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、「原子力規制委員会は安倍政権と電事連の虜だ」と厳しく批判しています。

原発の安全確保を放棄し、危険性を指摘する地震学者を追放

再び愚かな道へ、原子力規制委員会(旧 原子力安全・保安院)

原子力規制委員会は、やはり看板を付け替えただけで、中身は旧組織の体質をそのまま引き継いでいるようである。

かつて、福島第一原発の国会事故調査委員会は調査報告書で、こう指摘した。

規制する側の原子力安全委員会と原子力安全・保安院が、規制される側の電力会社の「虜」となっていた。すなわち、電力会社と、業界団体である「電事連」に都合のいいように使われていたために、安全対策がおろそかになっていたのである。その教訓から誕生したのが、原子力規制委員会と、事務局の原子力規制庁だったはずだ。「虜」の立場から脱することが使命だった。

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ところが、実務にあたる規制庁の官僚は、多くが原子力安全・保安院からの移行組であり、当初から意識改革が可能なのか疑問の声が上がっていた。とくに、安倍政権が復活し、原発再稼働方針を打ち出してからは、原子力規制委員会の姿勢も当初より緩み、再び、愚かしい道をたどりつつあるように感じる。

消された地震学者

ある「事件」が起きた。7月19日、東京都港区の原子力規制委員会会議室での出来事だ。

田中俊一委員長、石渡明委員のほか、規制庁の櫻田道夫規制部長ら数人が待ち受けるなか、白髪の紳士が一人で入室し、着席した。前原子力規制委員会委員長代理、東大名誉教授、島崎邦彦。かつて東京大学地震研究所教授、日本地震学会会長をつとめた。まさにその分野の権威だ。付け加えるなら、規制委員会のなかで、ただ一人の地震学専門家でもあった。

民主党政権時代の2012年9月に委員会が発足した際、細野豪志原発担当相はこう強調した。

原子力ムラから規制委に地震学者を入れるなと圧力を受けたが、3・11の教訓を生かすために地震学の第一人者である島崎先生に無理なお願いをした」

国民の立場から見ると、地震の専門家が入らないで、どうやって地震・津波に対する原発の安全性を確保するのかと思う。ところが、電力会社は違うようだ。地震対策は完璧にやろうと思えばきりがなく、カネがかかってしようがない。だから、地震学者はいわば「天敵」に見えるのだろう。

果たせるかな、島崎は委員会の中で、唯一といっていいほど厳しい審査をして、原子力ムラやその御用メディアの批判を浴びた。そのためか、島崎は2014年9月の任期満了で再任されず、結果として、規制委員会に誰一人として地震専門家はいなくなってしまったのである。この人事の背後に、原発再稼働をめざす電力業界の激しい巻き返しと、安倍官邸の意向があったのは言うまでもない。

Next: 原子力ムラの逆鱗に触れた地震学専門家の「出過ぎた真似」とは

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