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「魔の8月」の恐れも。日銀の追加緩和を逆手に取る外国人投資家=江守哲

日本株に大きな影響を与える外国人投資家やヘッジファンドは、今回の日銀追加緩和をどのように捉えるでしょうか?彼らに評価されないと、むしろ株価は下がってしまいます。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2016年8月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した全文もすぐ読めます。

プロフィール:江守 哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

楽観する市場に危険な兆候。「不自然なドル安」は何を意味するか?

日銀追加緩和決定、黒田総裁の説明をどう捉えるか

日銀は28・29日に開いた金融政策決定会合で、追加の金融緩和を決めました。現行の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」をさらに推し進め、株価指数連動型上場投資信託(ETF)の年間買い入れペースは3兆3000億円から6兆円に倍増させることになりました。

これが今回の決定の目玉なわけですが、外国人投資家ヘッジファンドはこの方針をどの様に捉えるでしょうか?

彼らが認めないと、日本株は上がらないことはすでに知られた事実です。日銀が「今回は頑張って緩和しました、外国人投資家さん、よろしくお願いいたします」といったところで、株価は上がりません。

彼らに評価されないと、結局はむしろ株価は下がってしまいます。

直近では、今後の政策への期待もあり、日本株を見直す動きもありました。しかし、今回の決定に対して、彼らはどのような評価をするかはまだわかりません。

しかし、最初の市場のリアクションとしては、決してポジティブではないように思います。

彼らが嫌がるのは、人為的な歪みから生じる動きです。逆にいえば、それを逆手にとって利益を獲得しようとするのがヘッジファンドともいえます。

そこでヒントになるのが、国債先物の急落かもしれません。なぜこのタイミングで国債先物が急落する必要があったのか。

政府は財政出動、日銀は量的緩和を続けざるを得ません。そして、その政策を否定してはいけません。しかし、その限界については、すでに市場に見透かされているように感じます。

その結果が、国債先物の動きにあらわれているとすれば、それは非常に危険なサインということになります。

黒田総裁はETFの買い入れ増額が市場に与える影響については「特定の株価を目標にせず、市場機能を損ねることはないと考えている」との認識を示しています。

また国債の買い入れによる量的緩和が限界に達しているのではないかとの見方に対しては「国債の3分の2はなお市場にあり、限界に達しているとは考えていない」と否定しました。

しかし、それはあくまで個人的な感想であり、感覚的なものです。検証したところで、成果を得られるわけではありません。市場は生き物です。いい加減な発言にしか聞こえないというのが、正直な感想です。

日銀はすでに大量に国債を抱えているわけですが、その価値が急落したところで、目先は何も問題は起きません。償還まで持ち続け、実際の償還を受ければよいわけですから。

このような楽観論が出てくるとき、市場がどうなるかは、海外の投資家やヘッジファンドは良く知っています。したがって、8月の動きについては、これまで以上にかなり注意が必要になってきたように感じます。

ヘリマネ永久債の議論が出てきました。もちろん、現行の法の下ではできません。また、黒田総裁も否定しています。当たり前ではありますが、ここに何か大きな問題が潜んでいるように感じます。

何をしでかすかわからない安倍首相と黒田総裁ですが、それでも今回もまた「勝負あった」という感じがします。8月2日の景気対策が分岐点になるのかもしれませんね。

今年も「寒い夏」になるかもしれません。引き続き注意していきたいと思います。

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