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日本も追随?中国ネット広告詐欺の進化とブラウザの死、TikTokとbilibiliが指し示すアドテクノロジーの未来=牧野武文

インターネット広告の登場で邪魔で無関係な広告が消えるかと思いきや、まったくそのようには進化していません。広告トラッキングによるプライバシーの問題も浮上しています。また中国のネット広告業界では、広告トラッキングの問題がない代わりに、ネット広告詐欺が頻繁に起きています。今回は、ネット広告詐欺がどのように行われているのかをご紹介し、そして、従来のネット広告を変え、新しい広告モデルを構築しようとしているビリビリとTikTokの事例をご紹介します。日本のネット広告の未来が見えるはずです。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2021年1月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

進化が遅いネット広告

今、ネット広告が大きな課題に直面しています。ネットを利用すれば、どこにでも広告が表示されることはどなたもご存知のことです。多くのメディアは、その広告掲載料で運営をされていて、これにより、私たちは無料でニュースその他の有用な情報に触れることができるのですから、ある意味、素晴らしい発明だったことは間違いありません。

しかし、ひとつ期待を裏切ったのは、ネット広告の技術的進化があまりにも遅い、あるいは進化の方向が私たちの望んでいる方向とは違っていたことです。

グーグル検索などが登場してきた20世紀末、ネット広告はひとつの有用な情報源のひとつになるはずでした。

それまでのアナログなマスメディアの広告は、印刷や放送という一方通行の配信方法であったため、読者、視聴者全員に同じ広告を配信するしかありませんでした。マスメディアの広告エンゲージメント(反応率)はきわめて低いものです。しかし、大量の人に広告を配信するため、エンゲージメントが低くても一定数の見込み客を得ることができ、ビジネスとしては成立するというものでした。その代償として、大多数の人にとっては広告は雑音であり、じゃまなものになっていました。

ネット広告は、広告=ノイズという問題を解決できる切り札だと考えられていました。個人のネットでの検索履歴、行動履歴を分析することで、その人がどのような分野に興味があるかどうかがわかります。ネット広告は、個人ごとに配信する内容を変えることができるので、その人にぴったりの広告を提示することが可能です。

ジョギングをしたいと思い、地図を開いて、近所のジョギングコースを検討していると、シューズやウェアの広告が表示され、それをクリックすると、ジョギングセットがECで購入できるというようになります。ここまでくると、広告はノイズではなく、有用な情報源のひとつになってきます。

しかし、現実はそうはなっていません。見るからに興味が持てないゲームアプリの広告であったり、出会い系サービス、消費者金融の広告であふれています。ネット広告はエンゲージメントが得られたときにだけ広告費が発生する成果報酬型が一般的であり、何回でも繰り返して表示できるため、無駄打ち覚悟で表示をするため、結局、それが雑音になってしまっているのです。

スマートフォンでは、広告によって表示画面が狭められ、それが使いづらいという理由で大画面スマホが人気になります。動画共有サイトでは、わずか30秒の動画を見るのに、それと同じくらいの尺がある広告を見なければ本編が始まりません。長い動画を見ていると、本編の内容とは関係なく、唐突に広告が入り、本編が分断されてしまいます。

ネットは、旧メディアに比べて、もはや広告の割合が高いSN比(信号と雑音の比率)の低いメディアになってしまったのかもしれません。

問題山積の広告トラッキング

特に近年問題になっているのが、広告トラッキングの問題です。広告プラットフォームは、あなたの行動を監視し、追跡するようになっています。

ウェブにあるクッキー(小さな情報保存用ファイル)という仕組みを利用して、広告プラットフォームは、あなたがどのサイトを見ているかを監視し、広告を配信するのです。あるサイトで、自転車について調べ、別のサイトに移動しても自転車の広告が表示されることになります。広告トラッキングと呼ばれる手法です。

これは消費者にとってあまり気持ちのいいものではありません。さらに問題なのは、その広告プラットフォームがワールドワイドなもので、契約をしているサイトが無数にある場合、その広告プラットフォームにはユーザーがどこのサイトを訪問しているか、行動が筒抜けになってしまうことです。

プライバシーの観点からも、大きな議論を呼んでいる問題です。

Next: プライバシーに無頓着な中国、広告はどう進化?

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