fbpx

中国の電気自動車が「2020年後半から急に」売れ出した理由。EVシフトの大波は日本にも=牧野武文

若者たちが再びマイカーに興味を持ち始めた

まず、基本的な統計を確認しておきましょう。中国汽車工業協会の統計によると、中国の自動車販売数は2017年をピークに下落傾向にあります。都市部では自動車台数が過剰となり、大都市では中心部の乗り入れに曜日で変わるナンバー末尾制限を実施しています。

また、頭が痛いのが駐車難です。公共の駐車場が少なすぎて、停めるところがなかなか見つかりません。最近では、家族や場合によっては人に頼んで、空いている駐車場を探してもらい、そこに立って、他の車を停めさせないという「人肉駐車」と呼ばれる行為が問題になったりしています。車はもはや便利とは言えない乗り物になっているのです。

また、若い世代もマイカーに対する興味を失いつつありました。95年以降生まれのZ世代(20代前半)は、1日に7.5時間もスマートフォンを使います。つまり、活動している間は常にスマホを触っているのです。そのような世代は、運転をしたいとは考えません。数時間の間、スマホを触ることができないというのは、刺激のないつまらない時間になってしまうのです。

一方で、大都市、中都市では、地下鉄、EVバス、タクシー配車、ライドシェアなどの公共交通機関がスマホで便利に使いこなせるようになっています。そのような公共交通機関で移動をすれば、移動中にもスマホを触ることができます。そのようなことからZ世代はマイカーへの興味を失っていきました。

しかし、「vol.049:自動車に関心を示し始めたZ世代」でご紹介したように、2020年10月に行われたZ世代へのアンケート調査「中国Z世代自動車購入傾向調査」(OPPO他)では、Z世代が自動車購入に強い関心を持っていることが明らかとなりました。実際に購入するかどうかは別として、自動車の購入を考えているZ世代が69.9%にものぼりました。

【関連】中国が「若者のクルマ離れ」を阻止。日本が学ぶべきZ世代向け戦略=牧野武文

実際に新エネルギー車は新型コロナ終息以降、はっきりと売れるようになっています。2020年の2月から6月までは、新型コロナの感染拡大で、かつてないほどの落ち込みでしたが、その後、夏以降にめきめきと売れるようになり、最終的には136.7万台と前年を上回ることになりました。12月にはどこのEV販売店にも多くの消費者が来店し、大忙しだったそうです。

ラインナップが充実。上位クラスのEVまで飛ぶように売れている

しかも、日本でも話題になった代歩車「五菱宏光MINI EV」だけが売れているわけではありません。

乗用車市場信息聯席会(乗聯会、CPCA)が公表した2021年1月のメーカー別販売ランキングによると、ヒット商品となっている五菱が圧倒的な1位となっていますが、2位はBYD、3位はテスラとなっています。また、ニーオも好評で、下位から上位に食い込もうとしています。

このようなEVメーカーの売れ筋車種は、テスラでは25万元(約410万円)から、BYDは22.98万元(約380万円)から、ニーオは35万元(約580万円)からと、決して安くありません。日本人の感覚でも、高級車とまでは言えなくても、大衆車より上のクラスになります。ましてや日本と中国の物価の差を考えると、決して気軽な買い物ではないはずです。

EVが売れるようになった理由のひとつとして、ラインナップが充実してきたことがあります。どのメーカーも、セダンとSUVは必ず用意し、グレードやタイプなどのバリエーションも広がってきました。このラインナップが揃ってきたというのが売れるようになった大きな要因のひとつになっています。

それまでは、セダン1車種ぐらいしかないので、同グレードのガソリン車と比較をし、ガソリン車にするかEVにするかという選択になります。その場合、どうしてもガソリン車と比べた場合のEVのデメリット(充電の煩わしさ、航続距離など)が目立ってしまいます。しかし、EVだけで車種のバラエティがあると、「EVを買う」と決めた消費者が店舗を訪れ、利用スタイルによってEVのデメリットが小さい車種を選べるようになります。

Next: 見た目は同じでもガソリン車とは別物。EVシフトの背景は?

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー