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中国の電気自動車が「2020年後半から急に」売れ出した理由。EVシフトの大波は日本にも=牧野武文

コロナ禍でマイカー需要が増加

このEV人気の背景にあるのは、コロナ禍の影響であることは確実です。読者の方の中にも同じ感覚の人はたくさんいらっしゃると思いますが、コロナ禍により、マイカーでの移動が見直されているのです。言うまでもなく、他人と接触することなく、プライベートな空間を保ちながら移動ができるからです。

しかし、自動車全体の販売台数は下落傾向が続いています。2017年の2887.9万台をピークに下落傾向が続き、2020年もコロナ終息以降に市場は活気づきましたが、2020年全体では前年を超えることはできず、3年連続の下落となりました。この傾向は今後も変わらないと見られています。

一方で、新エネルギー車の販売台数は2019年にいったん下落をして、EVシフトの先行きが危ぶまれましたが、2020年は後半に大きな波がきて、136.7万台という記録を作りました。

コロナ禍で自動車での移動が見直され、今、車を買うのであれば環境に優しいEVだということになるのだと思います。

EVの弱点が解消されてきた

EVには数々の問題があり、消費者から敬遠されていることもお伝えしてきました。

ひとつは満充電での航続距離の問題です。中級車以上では、バッテリー技術の進化により、航続距離500km以上、急速充電対応が当たり前になってきましたが、それでも泊まりがけの旅行に行く場合は、事前に充電ステーションの位置を把握しておく必要があります。通勤のように決まった走行をする場合や、日用の買い物など短距離の走行をする場合は問題がなくても、計画を立てない気ままなドライブ旅行や長距離走行が苦手なのです。

つまり、休日に「今日は天気がいいから、どこかに行こうか」と思い立ち、適当に海の方に行ってみるというような気ままな走行には向きません。このような自由さの点では、やはりガソリン車に分があるのです。

この点でもコロナ禍が影響をしています。コロナ終息以降、「内循環」という言葉が使われるようになりました。本来は、「国内経済を回していく」という意味ですが、長距離移動の制限が続く中で、同じ省内、同じ都市内の観光地やアクティビティ施設を訪ねる意味でも使われます。移動距離と時間を短くして接触リスクを下げ、美しい景観や自然を楽しむという休日の過ごし方です。

このような日帰り旅行であれば、場所によっては途中充電なしで行けますし、途中で1回充電すれば間に合います。夕方の高速道路は渋滞をするのがわかっていますから、帰りは途中で高速を降りて、早めの夕食を食べながら充電をし、渋滞が解消した頃にのんびりと家に帰るというパターンも多いそうです。

しかし、EVの人気が高まっているのは、コロナ禍による行動の変化により、EVの弱点が薄まっただけではありません。EVメーカーも数々の工夫をして、消費者の関心を取り込もうとしています。それが功を奏してきた面も小さくありません。

メディアでは、このEV人気は「意外なのか当然なのか」という議論がされています。意外だと主張する人は想像もしていなかった嬉しい事態だと言い、当然だと主張する人はEVメーカーが積み上げたことが成果を結び始めたと言います。

では、EVメーカーはどのような努力をしてきたのでしょうか。ここからは、動き始めたEVシフトについてご紹介します。

Next: 中国でEVシフトが加速。メーカーの戦略も大当たり

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