欧米諸国は中国の新疆ウイグルや香港などでの人権侵害問題を強く批判し、北京冬季五輪ボイコットや国境炭素税構想など様々な面で影響が出ています。これらが日本経済と菅政権に大きな重しとなります。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2021年3月29日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
コロナバブルの神通力が低下
最高値をうかがう米国株に引っ張られて、日本株も日経平均が一時3万円越えを達成しました。市場にはコロナが続く間は世界の金融支援が得られるとして、ある種の「コロナバブル」の様相を呈していました。
しかし、このところ、この「コロナバブル」の神通力が弱まった感があります。
これまで新型コロナを盾に、大規模金融緩和の美味しいところどりをしてきた面がありますが、各中央銀行ともに、追加緩和策を使い果たした感があります。
その一方で、新型コロナの感染一服感がまた裏切られました。欧州では変異株が猛威を振るい、またロックダウンを余儀なくされる国が増え、日本でも緊急事態宣言解除後に、感染がまた拡大し、第4波が懸念されるようになりました。
それに加えて、株式市場の目が、これまでの「じゃぶじゃぶの金融緩和」から大規模な財政支出に移り、主役交代が起きています。
しかも、その規模が各国ともに半端でなく、米国では中国をも上回る高成長予想が聞かれるようになり、長期金利が大きく上昇してきました。これが株に重しとなる場面が見られるようになりました。
さらにまた日本株には、中国の影響が強く出るようになっています。
一時は中国株の代わりに日本株が買われていたのですが、最近ではこれが逆転、米国の中国強硬論のあおりを受けて、香港、上海株の下げとともに日本株が売られる場面も見られるようになりました。
金融相場から財政主役に
まず金融から財政への主役交代が、様々なルートからコロナバブルを色あせさせる形になっています。
IMF(国際通貨基金)が今年1月27日に改定した「財政報告」によると、世界のコロナ対策はなんと13兆8,750億ドルにものぼるようになりました。
米国の4兆130億ドルを筆頭に、大半が先進国で実施されました。
その米国では、積極財政をうたうバイデン氏が大統領に就任し、早々に1.9兆ドルの追加コロナ支援策を通したうえに、さらに3兆ドルから4兆ドル規模と言われるインフラ投資、クリーンエネルギー対策、雇用対策のヒッグ・プロジェクトを用意しています。
このため、米国10年国債利回りは、昨年夏に0.5%まで低下した後、この3月には一時1.75%を超えました。
これまで投資対象としては株の独占市場でしたが、米国債の利回りがここまで高まると、株にも有力なライバル登場となります。
実際、国債利回りが節目を超える時には株売り国債買いが見られました。そして米国経済が6%以上の高成長となれば、FRBの金融支援もどこかで終了するのでは、との不安がよぎるようになりました。FRB自身はまだ緩和姿勢を続ける姿勢ですが。
逆に経済が好調で、インフレ率が2%を超えるとの見通しをFRB自身が持つようになったにもかかわらず、FRBが大規模緩和を続ければ、インフレ率がさらに高まるとの懸念もあり、金融緩和を前提とした「コロナバブル」が維持できないとの不安も聞かれるようになりました。
米国株の上昇エンジンが弱まると、日本株への支援も低下します。