fbpx

「コロナ長期化で借金返せぬ」人と企業が急増。ばら撒きマネーが不良債権に変わる日=斎藤満

このままでは「第5波」も避けられない

問題は、コロナの感染がいつまでたっても収束せず、経済がなかなか正常に戻らず、借金を返すような環境がいつまでたってもやってこないことです。

同じ企業でも、輸出で稼げる製造業は比較的堅調ですが、非製造業の中でも接触型サービス業の苦戦が続いています。

飲食業や運輸、娯楽サービス業では客足が減り、売り上げ利益が大きく落ち込んだまま、という所が多くなっています。

政府は飲食業に時短を要請し、その見返りに協力金を支給していますが、いくつかの分析によると、必ずしも時短だけが売り上げ減少の主因ではないと言います。

むしろ、店が密になっていたり、パーティションがなく、換気も不十分な店では、客が感染リスクを感じて離れてしまうと言います。逆に、感染対策をしっかりとっているお店は、それ相応に客が入っています。

それを一律に時短で8時までとしたり、酒類の販売を制限したりするだけでは、効果にも限度があります。

結局、こうした対応を繰り返しても、感染の大波は回避できず、第4波をもたらして3度目の緊急事態宣言発出となったのですが、感染防止策が徹底されず、ワクチン接種も大幅に遅れているため、4波の次にまた第5波が来る状況が不可避と見られています。

返済原資ができない

これでは緊急事態宣言を出しても出さなくても、感染リスクの不安がある限り、来客は限られ、売り上げは制限されたままです。

これが続く間は、借金した企業は返済できるだけの収入を得られません。

利息が雪だるまにならない分、救いはありますが、いつまでも返せない借金が残り、財務を圧迫し続けます。

最近は追加融資を断られ、資金繰りに窮するところも増えています。M2が前年比1割近く増加していることは、それだけコロナ禍で債務を増やした企業や個人が多いことを示しますが、その返済原資を得られるような経済の回復は当分見込めません。

生産に結び付かないマネー

金融緩和でマネーを増やそうとする政策の目的は、そのマネーが生産や投資に結び付いて、経済を拡大させ、活発なものにするためです。そこでは企業も値上げが通りやすくなり、収益も増えます。

ところが、コロナ禍で増えている借り入れは、従来の「運転資金」「設備資金」と違って、借りたお金が生産や投資の増加に向かわず、収益が減った分の穴埋めに使われます。

従って、借り入れは増え、マネーストック(M2など)も増えているのですが、経済が拡大しません。

店を早く閉じて収入が減った企業、来客が減ったり、休業を余儀なくされた企業が生き残りのために当座必要な資金を借りても、それが商売の拡大に使われるわけではなく、食べていくための借金となります。

数字で見ましょう。

昨年のコロナ前の1-3月の名目GDPは年率554兆7千億円、その3月末の国内銀行の国内総資産は1,166兆円でした。これが昨年10-12月にはGDPが551兆円に留まる一方、国内銀行資産は1,262兆円に増えています。つまり、GDPという付加価値生産に結び付かなかった信用供与が100兆円にも上ったことになります。

Next: 沈みゆく日本。銀行には不良債権が積みあがる。

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー