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節税保険で稼ぐ保険会社と、税制改正で搾り取る国税庁「イタチごっこ」40年のまとめ。決着は近い?=奥田雅也

節税保険をめぐり、なんとしても販売を増やしたい生保会社と、税制やルールを変えてでもお金を徴収したい国税庁の「イタチごっこ」の変遷について、生命保険・損害保険活用術に精通した奥田さんが解説します。そろそろ決着がつく?(『奥田雅也の「無料メルマガでは書けない法人保険営業ネタ」』奥田雅也)

※本記事は有料メルマガ『奥田雅也の「無料メルマガでは書けない法人保険営業ネタ」』2021年5月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:奥田雅也(おくだ まさや)
事業(医業)経営に関する生命保険・損害保険活用術に精通し、過去20数年間で保険提案した法人数は2,500社以上。現在は大阪を拠点として保険代理店経営・保険営業を行うかたわら、年間60回程度の講演や、業界紙・本などの執筆、コンサルティング業務を展開中。著書に『ここから始めるドクターマーケット入門』(新日本保険新聞社)『法人保険販売の基礎』(電子版・保険社)など。

これまでの法人生保税務の変遷

法人向け生命保険をめぐる、税務変遷のまとめをツイッターで紹介しました。

この変遷を細かく見ていきますと、なかなか味わい深い、国税庁と保険会社の「イタチごっこ」が見えてきます(笑)。

(当局)
昭和55年に法人税基本通達により養老保険・定期保険の保険料経理処理を明確化。
※当時の通達では特約部分は受取人が誰であっても法人の損金に計上してよいという内容。

(保険会社・販売現場)
特約の保険料を大きくして法人で損金処理をする販売が過熱する。

(当局)
昭和59年に特約保険料に関する経理処理を規定した法人税基本通達9-3-6の2が新設される。
※あまりに販売が多かったため適用は昭和61年からと1年間の猶予期間が設けられる。

(保険会社)
保険期間を長くすることで、将来の保険金支払に備える積立金部分を増やした商品を開発

(販売現場)
途中で解約した場合には積立部分が解約返戻金として発生する課税繰延効果に着目をして販売

(当局)
昭和62年に長期平準定期保険の保険料取扱が制定される

(保険会社)
保険金額が増えるために将来の保険金支払に備える前払部分がより多くなることで解約返戻金が増える逓増定期保険を開発

(販売現場)
長期平準定期保険よりも解約返戻率が上昇するために、より多くの課税繰延効果が発生。この課税繰延効果を訴求する販売が過熱する

(当局)
平成8年に逓増定期保険に関する保険料取扱が制定される

(保険会社)
当時のルール(90・105・120ルール)で損金性を高めると解約返戻金のピークが早くなるため、払済保険に変更すると終身保険になる仕組みを導入して解約返戻金の益金計上タイミングをコントロール出来る仕組みを開発

(販売現場)
ピーク時に払済をして契約を保有することを前提にした販売が全盛となる

(当局)
平成14年に払済時には原則、洗替の経理処理が必要となるルールが制定される

(保険会社)
保険商品の開発競争が激化し、逓増定期保険において全額損金計上が可能でピーク時の解約返戻率が100%前後の商品が主流となる

(販売現場)
課税繰延効果を訴求した販売が過熱する

(当局)
平成20年に逓増定期保険の経理処理ルールが改定される

(保険会社)
従来通り1/2損金計上が可能だった長期平準定期保険に着目し、災害保障タイプの商品が開発される

(販売現場)
全額損金計上が可能なため課税繰延効果を訴求した販売がまた過熱する

(当局)
令和元年の法人税基本通達改定により生命保険を使った課税繰延効果を封じ込める

(保険会社)
課税繰延効果が関係のない契約者名義変更プランに着目した商品を開発

(販売現場)
名義変更時の損失計上と、個人への資産移転を訴求して販売が増える

(当局)
令和3年に法人から個人へ契約者名義変更をする際の評価方法を変更
※イマココ

この流れを見ていると、税務ルールを踏まえて解約返戻率を高める(積立部分が大きくなる)仕組みで商品開発を行い、その税効果を訴求する販売が増えて、当局が課税強化をする流れが繰り返されてきたことがよく分かると思います。

Next: 保険会社が税制のスキマを突く商品開発は今後も続くのか?

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