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異常気象で食料品高騰、世界的なインフレは日本を巻き込むか?水不足と飢餓で各国混乱=高島康司

異常気象と食料価格の高騰

温暖化に伴う災害はリアルタイムで進行しており、被害の全体像がまだ見えていない。だから、これが農畜産物や食糧生産に与える影響はまだはっきりとは分かっていない。だが、部分的ながらも、すでに食糧生産に影響が出ているものもある。いくつか代表的なものをピックアップする。

<ブラジルのコーヒーとトウモロコシ>

今年の夏、ブラジルで64年ぶりに雪が降った。 異常低温のために、ブラジルの農業生産は大きな打撃を受けた。ブラジルは世界でも有数のトウモロコシの輸出国だが、現時点ではトウモロコシの生産量は当初の予測を大幅に下回ると予想されている。

またブラジル産のアラビカコーヒーの価格は、8月の最初の週に約7年ぶりの高値を記録した。異常な寒さがアラビカコーヒーの収穫に影響を与えたので、企業はコストを消費者に転嫁せざるを得なくなっている。そのため、今後さらに価格が上昇する可能性がある。

ブラジル政府の予備的な試算によると、先週の霜だけで15万~20万ヘクタールの被害があり、これはブラジルのアラビカ総作付面積の約11%にあたる。

また、ブラジルのトウモロコシだが、畑への被害の全容はまだ明らかになっていない。 現在のところ、トウモロコシの総生産量は昨年に比べて約17%減少する可能性があると予測されている。

<メキシコの牛肉>

メキシコ北部では、水不足による干ばつが深刻だ。このため、牛が食べる植物が極端に不足しており、多くの牛が死んでいる。この2年間の極度の干ばつにより、メキシコ北部の広大な地域は骨抜きにされてしまった。高品質な牛の産地として世界的に有名なソノラ州では、早々に家畜の売却や屠殺を余儀なくされたので、ソノラ州の牛の数は110万頭から約63万5,000頭に減少したと当局は発表している。

メキシコは、世界第6位の牛肉生産国である。この牛肉生産の減少は、かなり近いうちに価格上昇の原因になることだろう。

<マダガスカルの飢餓>

インド洋に浮かぶ島国マダガスカルは、過去40年間で最悪の干ばつに襲われている。

マダガスカル南部では雨がまったく降らず、作物の不作や大量の飢餓が発生しているが、これらはすべて気候変動が原因だ。国連の「世界食糧計画」によると、100万人以上が十分な食料を得られず、数万人が飢餓の危機に瀕している。

<アメリカの水不足と小麦>

アメリカは世界有数の小麦の生産国だが、やはり深刻な水不足に見合われている。だが、全体の生産量がどのくらい影響を受けるのかまだはっきりしていないようだ。これからどのくらい深刻なのか分かってくるようだ。ただ、内陸北西部の小麦生産量はかなり減少すると思われる。

しかし、特に大規模森林火災に襲われているカリフォルニア州の水不足は、深刻な状況に達している。例えばメンドシーノ海岸のフォートブラッグ市では、緊急用の海水淡水化システムの設置を急いでいる。またヒールズバーグ市では、芝生への水やりが禁止され、最高で1,000ドルの罰金が科せられる。シスキュー郡のホーンブルック市では、蛇口が完全に乾いてしまい、水道局の局長すら、片道15マイルもかけてシャワーや洗濯をしている始末だ。

このような事態は、これまで経験したことがない。カリフォルニア州は少なくとも1977年以来、最悪の干ばつに見舞われているが、7,500カ所の公共水道のうち、どの水道が最も深刻な水不足に直面しているのか調査されていなかった。最近カリフォルニア州当局によって調査が行われた結果、「危機的な水の供給問題」に直面している水道が少なくとも81カ所あると警告している。これには、カリフォルニア北部のかなりのエリアが含まれる。

こうした状況が、農畜産物や食料の生産に甚大な影響を与えることは間違いない。しかし、いまのところ、影響がどの程度のものになるのか、その全体像はまだ分かっていない。かなり近いうちにはっきりとしたデータが出てくることだろう。その時には当メルマガでもすぐにお伝えする。

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