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潰れる会社と生き残る会社 三菱自動車と東芝、オリンパスの「差」=山崎和邦

シャープとエルピーダメモリの違い

シャープとエルピーダメモリの違いはどこにあったか。エルピーダは破綻の寸前に公募増資をした。その時から公募増資引き受け株の信用つなぎ売りは禁止されてできなくなった。これを決めたのは東証である。破綻に任せたのは、敢えて言えば、時の政権が市場経済に疎かったからだ。無論、筆者は民主党の元経産相枝野氏を指して言っている。

その前、2020年ころ日興証券が80億円(だったと記憶するが)の粉飾決算をしても、一課長代理のミスだったとして不問に付された。人の会社の上場の適否を審査する総合証券が、自社の決算に大粉飾をして上場廃止を免れるという理屈は通りにくい。

これもまた筆者の“ゲスの勘繰り”だが、当時、同社は米資本と提携する段取りが進んでいたからだろうと筆者は邪推する。決めるのは東証である。その故か否かは知らないが、その直後に西室社長が東証社長を辞めた。

「後始末」の種々相

斯様に思いを巡らせると、西武鉄道のように正々堂々と社長が名乗り出てストレートに上場廃止して、筋を通して数年を待たずに再上場を果たし立派な株価形成している企業と、日興証券のように上場廃止しない理由の説明もなく闇から闇に葬られて居残る企業と、東芝のように国ぐるみで守り通す企業と、日本航空のように国のカネを投じて一流経営者を投入して短期で再建させる企業と、種々のケースがある。

そのビジネスモデルを国家が必要とする企業(日本航空)、その技術水準を国が必要とする企業(東芝)、国際的な企業提携のために上場廃止できない企業(日興証券)、何万人の失業者を輩出しても破綻させた企業(エルピーダ)、海外資本との提携が実現するまで粘って粘って頑張りぬかせた企業(シャープ)、社長がギャンブルで100億円をスってしまっても不問に付した企業(大王製紙)等々、種々相があって、そこに原理原則はないように見える。

日本長期信用銀行の破綻の場合は、最高裁まで行ったが経営者を罪に問えないという判決だった。当時の会計基準が不明確なため、最高裁は経営者に責任を問わなかった。経営者が地位を守るために赤字決算を子会社に移転させる「トバシ」(山一證券、オリンパス)のケースは、山一は大蔵省が自主廃業を薦め(実際は「強制」※後述)、オリンパスは3人を執行猶予付きの懲役2年6月にした。

当事者も観念してこれをすぐに飲んだばかりか、判決に対して被告が反省文を朗読したのはお笑いだった(筆者はその場で傍聴していた)。刑法の罪刑法定主義の論理を会計の世界に厳格に適用すれば不特定多数の株主の利益を損ねるから、経営者の粉飾決算の責任を問うことは難しい。

また、監査法人は多額の監査料を受け取ってカンサする商売だから、監査法人のトップにも責任を問わねばならない。ここに焦点を当てた良書が『粉飾決算 ―問われる監査と内部統制』(浜田康著・日本経済新聞社 2016年)である。

Next: 「後始末」に原理原則は存在せず、市場の鉄槌と報償あるのみ

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