山梨県有地「格安賃貸」の訴訟
まず「訴訟」について。これは売上高比率5%の不動産事業に関わる話です。
富士急行では、90年前から山中湖畔に別荘地の経営を行っており、富士急行の「祖業」のひとつだとも言われています。
当初、別荘地の開発構想は山梨県が打ち出し、富士急行が富士北麓に鉄道を敷して地域を開発する共同事業のようなものとして、お互いに信頼し合って二人三脚で長年進めてきた歴史があります。
しかし、どうやら、その関係性がねじれてしまったようです。
そもそもの発端は、山梨県が富士急行に貸している県有地について、南アルプス市の男性が「賃料が不当に安い」として、県に対し歴代知事や富士急行に支払いを求める訴訟を起こしたこと。
裁判では当初、県は訴訟に対して争う姿勢でしたが、長崎知事に変わってから「賃料の算定に重大な誤りがあった」と方針を転換し、富士急行に対し適切な対価を求めるとしました。
これを受けて、南アルプス市の男性は、歴代知事への損害賠償請求を取り下げ、富士急行に対しては、損害賠償請求の時効になっていない2001年まで遡った金額である、約364億円を請求する内容に変更しました。
これに伴って、山梨県は富士急行に対して「反訴」をしています。それまでは、富士急行と一緒に住民に訴訟される側だったのですが、住民からの歴代知事への訴訟が取り下げられた段階で、山梨県が富士急行を訴えることになったのです。
県の主張では、県がこれまで被った損害は総額約364億円ですが、そのうち、時効が成立しない金額である約93億を遅延損害金として富士急行に請求しています。
これに対し、富士急行は「山梨県の主張は根拠のないものであり、当社が損害賠償義務を負う理由はないものと考えております」また、「裁判において当社の正当性を主張して争っていく方針です」と発表。
山梨県と富士急行は90年以上前から、未開の富士北麓エリアを景観や自然の保護を図りつつ開発してきた歴史があります。
山梨県の突然の方針転換や反訴によって両社が長年築き上げてきた信頼関係にひびが入ったことになります。
今後の展開次第では、富士急行の経営にも大きな影響を及ぼしかねないと考えられますが、株式市場の反応は今のところ、限定的です。
株式市場でのダメージが大きいのは、来場者数に影響を及ぼす「ド・ドドンパ」での負傷事故の方でしょう。