不動産市場は習近平の敵
この政治権力闘争の中で、中国恒大集団や不動産市場を位置づけるとどうなるか。
不動産利権の多くは共青団の配下にあるといわれ、習近平氏からすれば、共青団の影響力を強めたくないので、不動産市場の拡大はあまり歓迎しない面があります。
そこで不動産の規制には比較的熱心です。
その中で中国恒大集団についてみると、その経営トップは江沢民派のリーダーでもある曽慶紅元国家副主席と近い関係にあります。つまり中国恒大集団は、江沢民・曽慶紅派の重要な資金源となっています。
江沢民派の影響力を弱めたい習近平主席からすれば、中国恒大集団を叩いておくことは、自らの権力基盤を安泰なものにする面があります。
つまり、政治権力闘争の観点からみると、習近平政権は中国恒大集団も不動産市場も救済するインセンティブに乏しく、むしろ敵対勢力は潰してもよいと思っているはずです。
ただし、それも国民の不満を高めない範囲で、という条件が付きます。
国民の暴動は回避
習近平氏が長期政権を維持するうえでは、自分を脅かすような対抗馬や勢力を排除し、国民の不満を高めないことが不可欠です。
これまで中国の体制が崩壊した主要な原因は、国民の不満爆発による暴動がきっかけになっていました。その点、今日の中国国内情勢は決して安泰ではありません。
このため、習近平政権がこのところ重視しているのは、政府の統制強化と、国民の不満のもとになるコスト高をつぶそうというものです。
このため、政権にとって都合の悪い話は封印し、民主化阻止、騰勢強化を強める一方で、国民の不満解消策も打っています。
中でも次の2つの施策に重点を置いています。
1つは「共同富裕」を掲げて格差の是正を図ること。そしてもう1つは、教育や住宅など生活コストを抑制して子どもを産み・育てやすくする環境を作ることです。
格差是正はよいとしても、これらの多くは経済成長を抑制し、中国経済には負担となる面がありますが、習近平政権は、経済の成長よりも政権の安定をより重視しています。
その結果、中国経済は予想以上に悪化し、周辺国にマイナスの影響を及ぼすリスクがあるとともに、国民の生活が悪化し、債務問題を露呈させて、経済の混乱が国民の不満醸成につながるリスクもあります。
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