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なぜロシアと欧米は対立しているのか。目前に迫る「ウクライナ侵攻」回避のシナリオと金融市場への影響=高島康司

合理性のあるロシアの主張と要求

しかしながら、たしかにこれらの要求は、ヨーロッパの既存の安全保障の枠組みを大きく塗り替えることになるにしても、ロシアの安全保障を考えるならば当然の要求でもある。

NATOの東方拡大やウクライナの加盟は、ロシアからすれば自国の喉元にナイフを突き付けられるようなことだ。日本にたとえるなら、北方領土や沖縄に中国の人民解放軍の基地ができるようなものである。また、アメリカであれば、メキシコやカナダにロシア軍が展開するようなものだ。

ロシアがNATOの東方拡大に強く抵抗するのは当然だ。

オバマ大統領も「アメリカはウクライナに重要な利害を持っていないが、ロシアは持っている。モスクワと対立し、敵対してはならない」と発言していた。さらにオバマは、「ロシアはアメリカの主要な敵国ではない」とも言っていた。

ウクライナやジョージャ、そして東ヨーロッパ諸国はロシアと陸続きだ。安全保障にとって極めて重要な地域だ。このようなロシアの懸念はバイデン政権も理解できるはずである。

とすれば、ロシアを満足させるなんらかの妥協は比較的に簡単なはずだ。20年間はウクライナのNATO加盟申請は拒否するというような、期限付きの妥協案は可能だろう主張する米ロの専門家も多い。

軍事介入に強く反対するトランプ支持者

実はアメリカ国内でも、ウクライナへの軍事介入が強く支持されているわけではない。これに強く反対する勢力がある。

共和党の主流となったトランプ支持の勢力は、強く反対している。この勢力の代弁者となっているメディアに「FOXニュース」があるが、特に有名な政治コメンテイターのタッカー・カールソンがこの意見を象徴している。

タッカー・カールソンは、ほとんど毎晩のように、他の主要メディアが尋ねようとしない質問を投げかけている。「なぜウクライナは、人命や資源、そしてロシアとの戦争の可能性を冒してまで、アメリカにとって十分に重要な地域だと言えるのか?」。カールソンはこのような質問を繰り返すことで、ウクライナを巡ってロシアと敵対関係になっているバイデン政権を強く非難している。

このようなウクライナ介入反対論は、カールソンだけではない。「FOXニュース」を中心としたトランプ支持のメディアに結集しているほとんどのコメンテイターが、同じような反対論を主張している。

しかし、こうした反対論を主張するものに対して、バイデン政権を支持するリベラルな主要メディアの批判は手厳しい。

「ネオコン」の象徴であるビル・クリストルは、「タッカーはプーチンを支持している」とツイートした。リベラル派のスターになったジョー・ウォルシュ下院議員は、「トランプ、タッカー・カールソン、その他の権威主義的な右派は、実際にはプーチンとロシアを支持している」と批判した。

また、元スタートレックの俳優(カトー役)で、現在はリベラル派の思想家であるジョージ・タケイは、カールソンがウクライナへの米国の関与に反対していることを引き合いに出して、「タッカーはプーチンに雇われているのか?彼は外国のスパイなのか?彼は外国の資産なのか?彼には良心があるのか?」などと非難した。

また、民主党のエリック・スワルウェル下院議員は、カールソンは「プーチンの言いなり」だと言った。MSNBCのリベラル派の司会者ジョイ・リードは、「FOXニュースの司会者は、自分の番組を使ってロシア寄りの話を広めている」と主張した。

Next: アメリカの軍事介入を支持する勢力も。戦争は起きるのか?

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