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なぜロシアと欧米は対立しているのか。目前に迫る「ウクライナ侵攻」回避のシナリオと金融市場への影響=高島康司

ロシアと欧米はなぜ対立しているのか?

このように、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を警戒して、金融市場も神経質な動きをしている。今後も相場は暴落する場面もあるだろう。

しかし、そもそもなぜロシアと欧米は対立しているのだろうか?

今回の対立の遠因になっているのは、2020年8月にアルメニアとアゼルバイジャンとの間で発生したアゼルバイジャン内の飛び地「ナゴルノ・カラバフ」の領有権を巡る紛争である。

この紛争でアゼルバイジャンはAIを搭載したトルコ製のドローンを大規模に導入し、紛争に圧勝した。このドローンは各地の紛争のゲームチェンジャーになると期待された。

これを見たウクライナは、すぐに同じトルコ製のAI搭載ドローンの導入を決め、すぐさま配備を進めた。トルコ企業との提携で、ドローンの製造工場をウクライナに建設する計画も立てた。そして昨年の10月27日、ウクライナ政府軍はこのドローンを使って東部のドンバス地域でウクライナからの分離・独立を主張している親ロシア派勢力を攻撃した。もしこのAI搭載ドローンが東部地域に全面的に配備されると、親ロシア派はウクライナ政府軍に敗北する可能性もある。

このような状況を警戒したロシアは、10万人のロシア軍をウクライナ国境に配備し、ウクライナによる東部の親ロシア派への攻撃を牽制した。親ロシア派への攻撃に踏み切れば、ロシアの全面的な報復を覚悟せよという脅しだ。

しかしロシアは、この紛争をロシアの安全保障にとっての最大の懸念を解消するための好機として利用しようと考えた。東ヨーロッパにおけるNATOの動きを止めることである。

ロシアは、1990年から91年にかけて行われた将来の統一ドイツの扱いを巡るソビエト・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスとの協議で、NATOは東ドイツを超えて東方には拡大しないと約束したものの、アメリカはこれを反故にしたと主張し、次のような内容をアメリカとNATOに要求した。

1. ロシアの国境に向けたNATOの拡大はしない。
2. 2008年のNATOによるウクライナとグルジアへの加盟要請の撤回。
3. ロシアに隣接する国に、モスクワを標的とした攻撃システムを配備しない法的拘束力のある保証。
4. ロシアとの国境付近でのNATOやそれに準ずる国(英国、米国、その他)の「演習」を行わないこと。
5. NATOの船舶や航空機は、ロシアの国境から一定の距離を保つこと。
6. 定期的な軍事的協議の実施。
7. ヨーロッパに中距離核を配備しない。

バイデン政権とNATOは、これらの要求のうち、(2)(6)(7)は協議が可能だとしながらも、他の項目に関しては、ヨーロッパの安全保障の基本的な枠組みを無効にする提案だとして猛烈に反発している。

バイデン政権もNATOも外交的な手段で問題の解決を目指すとしながらも、もしロシアがウクライナに軍事侵攻すれば、軍を動員して対決する構えだ。

Next: 合理性のあるロシアの主張と要求。一方、米国内では意見が二分

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