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なぜロシアと欧米は対立しているのか。目前に迫る「ウクライナ侵攻」回避のシナリオと金融市場への影響=高島康司

アメリカの軍事介入を支持する勢力

このように、共和党のトランプ寄りのメディアは、おおむねロシアの安全保障の必要性を理解しており、アメリカのウクライナへの軍事介入には強く反対している。ただ、こうした反対論はバイデン政権を支持するリベラル派の主要メディアから袋だたきにされている。

ウクライナ問題は、民主党のリベラルなアメリカと、トランプ支持の保守的なアメリカの分断を象徴する問題になっている。

では、ウクライナへのアメリカの軍事介入を支持しているのは、どのような勢力なのだろうか?

それは、バイデン政権の背後にいる勢力、「CFR(外交問題評議会)」を中心としたエスタブリッシュメントだ。バイデン政権には「CFR」のメンバーが主要閣僚のポストを占めている。

・ジャネット・イエレン財務長官
・アントニー・ブリンケン国務長官
・トム・ヴィサック農務長官
・ジナ・レイモンドー商務長官
・アレジャンドロ・マヨルカス国土安全保障省長官
・サルマン・アハメド国務省政策企画部部長

これは、アメリカ国内の産業を基盤にしたリバタリアン勢力が背後にいたトランプ政権とは大きく異なる特徴だ。トランプ政権には、「CFR」のメンバーは皆無であった。

ちなみに「CFR」には、「ゴールドマン・サックス」「JPモーガン」「メリルリンチ」「シティバンク」などのウォールストリートの金融界の中心的な勢力や、「ロッキードマーチン」や「グラマン」などのアメリカの主要な軍事産業が結集している。「ネオコン」と呼ばれる思想集団も、「CFR」とかかわりが深い。

一方トランプ政権では、「CFR」のメンバーは皆無であった。トランプ政権の基盤はエネルギーやギャンブル、そして不動産など、アメリカの国内産業を基盤にした超富裕層のリバタリアン勢力であり、「CFR」とは敵対的な関係にあった。

このように、金融産業と軍産複合体が結集した「CFR」が、現在のバイデン政権の外交政策を立案している。

ちなみに歴代の政権の外交政策は国務省の「政策企画部」が具体化しているが、このセクションの部長は代々「CFR」のメンバーだ。アメリカの外交政策は「CFR」の強い影響下にある。

もちろん、「CFR」を排除したトランプ政権は例外中の例外だ。

世界政府の樹立が「CFR」の長期的なアジェンダ

「CFR」には長期的なアジェンダがある。すでに陰謀論の世界では周知だが、それは世界政府の樹立である。これは「NWO(ニューワールドオーダー)」などと呼ばれている。これはファンタジーではなく、極めて具体的な計画だ。「CFR」の発行する外交誌、「フォーリン・アフェアーズ」に公然と主張されている。

1922年の「フォーリン・アフェアーズ」の創刊号には次のように書かれていた。

「世界が50や60の独立国家に分裂している限り、人類の平和と繁栄はない。現在のもっとも大きな課題は、世界政府の樹立である。」

こうした記述や発言には枚挙の暇がない。たとえば1974年にリチャード・ガーデナーという人物は「フォーリン・アフェアーズ」に「世界政府への困難な道」という記事を寄稿し、そのなかで次のように書いている。

「国家の主権を少しづつ剥ぎ取ることは、主権を全面的に攻撃するオールドファッションのやり方よりも、はるかに効果的だ。」

1975年、「CFR」のメンバーで米海軍のチェスター・ワード提督は、次のように発言している。

「『CFR』の目標は合衆国の主権を強力な世界政府に解消することである。合衆国の主権と独立の放棄は『CFR』のメンバーの間では、広く共有されている理念だ。『アメリカ・ファースト』のような深い嫌悪をもよおす言葉は、『CFR』の辞書には存在しない」

また、1996年、税の控除を受けている組織を調査した下院の特別委員会は、「CFR」を次のように規定した。

「『CFR』の目標は圧倒的にグローバリストのコンセプトを推進することにある」

さらに、もっと最近の「フォーリン・アフェアーズ」にもそうしたあからさまな記述は多く見られる。1993年、この雑誌に寄稿した大前研一は次のように書いている。

「主権国家は、人間の行動を組織し、経済活動を運営する主体としては、不自然である以上に、機能しないものになってしまった。」

そして、「国務省政策企画局」の部長で、2003年から現在まで「CFR」の代表であるリチャード・ハースは、寄稿した「国家の主権はグローバルな時代では弱められるべきだ」という記事で、おおよそ次のようなことを書いている。

「気象変動などのグローバルな問題に国家が単独で対応することは不可能だ。地球規模の問題に対処するためには、超国家的な機関の樹立こそカギになる。国家の主権は神聖なものではない。超国家組織の形成に向けて、国家主権は弱められるべきだ」

このように、「CFR」の「世界政府」のアジェンダは極めて現実的な目標として追求されている。グローバリストのアジェンダだ。「CFR」が背後にいるバイデン政権の外交政策もこれに強く影響されている。

Next: 反グローバリストの騎手としてのロシア

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