欧米および同盟諸国は、ロシアの一部銀行を国際決済システム「SWIFT」から切り離すことで合意した。2/24(木)アメリカ株が大きくリバウンドするきっかけになったのは「西側のロシアに対する経済制裁が甘い」という市場の判断だった。制裁が行われれば、実際に経済への影響は大きいし、上げた分は吹っ飛ぶ可能性が高くなるだろう。(『新天地の株式投資日記』)
※本記事は有料メルマガ『新天地の株式投資日記』2022年2月25日・26日号号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。実際に配信されたサンプル号もお読みいただけます。
プロフィール:新天地
祖父の影響で子どもの頃から株の売買を行う。証券会社で自己売買業務を経験後に退社、現在はデイトレーダー。メルマガでは主に脱初級・中級者向けに、東証・NYの市況(市場雑感)、相場の考え方、取引手法などを解説。一般に書かれることが少ない空売り戦略や取引アルゴリズムに関してもプレーヤーの立場から丁寧にフォローする。
2月26日(土)8:30 配信号
2/24(木)に急回復、さらに2/25(金)にアメリカ株が大きく上がった理由のひとつに「経済制裁の中にロシアをSWIFTから排除する」という強力な制裁が含まれていなかった、ということが挙げられる。
アメリカのNYダウの戻し1,000ドル以上は、SWIFT制裁がなかったためと言っていい。
(どっかで「株価が急回復したのは戦争が大したことがないからだ」って言ってた2ちゃんねるの創始者がいたが、これは完全な間違いと考える。あまりにも相場を知らない。戦争が大したことないのではなくて、 経済制裁が大したことなかったからリバウンドしたのだ。)
2/26(土)朝7:30のニュースでは「排除決定」がなされたようだ。「武力行使」だけなら許容できた?欧米も、核兵器の使用をちらつかせたりスウェーデンを武力で脅すなどをしはじめたロシアを、これ以上は容認できないということだろう。
ロシアに対する「兵糧攻め」が始まったと考える。
<「SWIFT排除」はどれくらいのダメージか>
ところで、「SWIFT=Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication」は、なんでも国際銀行間通信協会と訳すらしい。本拠地はベルギーの首都ブリュッセルにある。
僕が所属していた証券会社も当然使っていた。普段はまったく意識することがない話だが、それは「酸素を吸い込んでいる」ことを意識しないのと同じことなんだそうだ(詳しい人談)。
あまりにも当たり前にある仕組みだから、それが万が一使えなくなったら、国内の金融機関ならまず潰れるんじゃないか?と……。
例えば、僕がA銀行を使って、遠隔地(海外とか)の金融機関Xにある任意の口座に送金をしようとする。するとA銀行は別の金融機関Bにどこそこまで新天地っていう人のお金をこれだけ送ってほしい、というやりとりをする。この時に使われるインフラがSWIFTというわけ。
さらに金融機関BはXに送れるなら自分で送金手続きをするし、送れないならさらに金融機関Cにこの情報を伝える……というふうに、SWIFTを使ったいわば「バケツリレー」で情報が伝わり、最終的に金融機関Xに僕の送金依頼が届く。
この時、当然、実際の紙幣が移動するわけではない。ただ情報がSWIFTを通して自動で伝達していく。実際のお金のやり取りは一定期間ごとに金融機関同士の差引(相殺)で決済が行われる。
(AからBへ動くお金もあれば、BからAに動くお金もあるだろう。一定期間ごとに相殺して差し引きのお金の移動が発生するというわけ。BからXへ、XからBへのお金の動きもまた同じ。)
もちろん、SWIFT以外にもこういう地場の情報伝達システムは存在するのだが、国際的ではないし、いまの世界の金融機関の間の決済はSWIFTを使ったものが半数を占めるという。
SWIFTに参加できない金融機関なんて、SWIFT参加の金融機関からみれば、かなり面倒臭いということになる。
SWIFTの利点は安全性が高く(1977年以来、ノーミスらしい)汎用性の高いネットワークであること。かたやローカルのシステムは安全性が必ずしも担保されていないし、汎用性も低い。
金融機関としては使いづらいのだ。
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