状況が変われば、また日米は離反するかもしれない
しかし、時代は変わる。1991年12月25日、ソビエト連邦は崩壊し、アメリカとの冷戦は事実上終結することになった。もうアメリカは共産主義の脅威と戦う必要性がなくなった。
共産主義陣営は、もうアメリカと張り合う体力がなくなったどころか、国家を維持することすらもできなくなった。そこまで追い込まれていったのである。
そして、どうなったのか。アメリカはもう日本を繁栄させ、防衛する必要性をなくしたのである。むしろ、想定以上に豊かになった日本は、アメリカの「経済的な敵」になりつつあった。
だから、日米同盟は1991年の冷戦終結で、ひとまず役割を終えたと考えることもできる。冷戦のために必要だった日米同盟は冷戦が終わって意義を喪失した。冷戦が終わって、日米関係も変わったのだ。
表面的にはまだ日米同盟は続いているのだが、日本が1991年以降も変わらずアメリカに忠誠を誓っているのとは裏腹に、アメリカの方は日本から静かに離れようとしつつあった。
1990年代以降、鉄鋼、半導体、自動車、造船の分野で、アメリカはしばしば日本企業に懲罰的な賠償金の支払いを求めた。この日本バッシングを容認していたのが、ビル・クリントン政権だった。
こうした姿勢から、アメリカが「日本を潜在的な経済敵国として見るようになった」と日本人は感じ取っていたが、それでも日本人の多くはずっとアメリカが密接な同盟国であると信じて疑わなかった。
しかし、以後のアメリカは日本が存在しないかのように放置(パッシング)して、資本主義の仲間入りをした中国に傾倒するようになった。
ここで私が言いたいのは「アメリカですらも、いつも日本の味方であり続けることはない」ということだ。状況が変われば、また日米は離反するかもしれない。そうであれば、日本の安全保障はどうなるのか。
Next: ウクライナで起きていることは対岸の火事ではない