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深夜に働く介護士が語った“終末期ケア”を受ける高齢者の苦しみ。寝たきりは苦痛の連続、家族も知らない「静かで安らかな状態ではない」という現実=鈴木傾城

自分がどのように苦しいのかをうまく伝えられずにもがき続ける

毎日、シャワーや風呂に入ることもできない。寝返りも打てない。痰がからんでも自分で吐き出せない。しばしば誤嚥に苦しむ。そして排便も自分でできないのでオムツの中に垂れ流しになる。

人間は何もできなくなると、安らかに休めるのではなく、絶えず襲いかかる不快感の連続でずっと苦しみながら過ごすことになる。

だから、本人の苦痛を少しでも減らすために「ケア」が必要なのだが、そのケアは「付きっきり」となる。寝たきりの高齢者を真夜中もケアしないといけないのだ。

そして、付きっきりになったとしても、すべての苦痛に瞬時に対処できるものではないから絶え間ない不快感や苦痛から逃れられない。

痰が絡んだら瞬時に取り除いてくれるわけでもないし、寝返りを打ちたいと思ったら瞬時に寝返りを打たせてくれるわけでもないし、排泄物は瞬時に取り替えてくれるわけではない。そもそも紙オムツもタダではないので、なるべく長持ちさせるための工夫も必要となる。

そうなると、不快感がずっと続いたり、「便の菌が尿道から入って尿路感染」したりすることになる。それだけではない。

「オムツの中は常に蒸れているので、男性の方は睾丸の皮がふやけて真っ白になり、痒くて痒くてオムツを外した時に血が滲むほど掻きむしってしまう方もおられます」。

後期高齢者で寝たきりが長引けば、そうした苦痛を口にすることも筆談することもできなくなってしまい、認知にも問題が発生し、自分がどのように苦しいのかをうまく伝えられずにもがき続ける高齢者もいるという。

特別養護老人ホームにはそのような全介助の人ばかりが入居してるのだが、病院だろうと、診療所だろうと、介護老人保健施設だろうと、老人ホームだろうと、自宅だろうと、寝たきりが「快適だ」というのはない。

「寝たきりになるというのは、そういうことなのです」と、介護士は述べた。

寝たきりの苦痛はよく認識されてない

自宅で最期まで療養すると「慣れた環境の中で安らかな死を迎えられる」と思っている人が多いようだが、そうではない。きめ細やかな「終末期ケア」を求めれば求めるほど、経済的なコストもかかってくる。

経済的なコストを乗り越えて医師が往診してもらうとしても、訪問介護の体制が整ったとしても、寝たきりは「それ自体が苦痛をもたらすもの」なのだ。

しかし、私の会った介護士は「寝たきりの苦痛はよく認識されていないと思います。だから、寝たきりになっても生きたいという人がいるのだと思います」と述べた。

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