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深夜に働く介護士が語った“終末期ケア”を受ける高齢者の苦しみ。寝たきりは苦痛の連続、家族も知らない「静かで安らかな状態ではない」という現実=鈴木傾城

「人間は寝たきりで生きられる身体ではない」

私自身は終末期ケアを受けている患者は、痛みも苦しみもなく、安らかな状態で寝ていて死を待っているという想像をしていた。しかし、私がそのような状態なのかを尋ねると、その介護士は「そうではありません」と真っ向から否定した。

「寝たきりになるというのは、どういうことか分かりますか?人間は寝たきりで生きられる身体ではないのです。寝たきりになっても生きたいという人はたくさんいるのですが、寝たきりの本当のつらさを知ったら考えが変わると思います」。

「動物も自分で食べることができなくなったら死の準備をするので、人間も同じなのだと思います。寝たきりはほんと本人も介護する方もつらいです」。

具体的にどのようにつらいのか。

「寝たきりになると痰が喉に絡みます。でも寝たきりの高齢者はそれを飲み込んだり吐き出したりする体力もないのです。嚥下(えんげ)機能が弱るので誤嚥性肺炎になったり、オムツで便の菌が尿道から入って尿路感染したり、褥瘡(じょくそう)という床ずれで、めちゃくちゃ痛いやつになったりします」。

長く生きていると、誰もがモノを食べている時に、食べ物が胃ではなく間違えて肺に入ってしまった経験を持つだろう。若く体力のある時は、そうした誤嚥は自分で吐き出せるが、寝たきりになると誤嚥を戻す体力がない。

高齢者はしばしば誤嚥し、咳き込み、誤嚥性肺炎という非常に苦しい状態に追い込まれる。これを避けるために行われるのが「胃瘻(いろう)」なのだが、胃瘻は身体の一部に穴を開けて栄養素を無理やり胃に送り込む医療行為である。

欧米では胃瘻を「非倫理的である。老人虐待である」と考えているのだが、日本ではこの胃瘻が普通に行われている。他にも経鼻胃管というやり方もあるのだが、これもまた大きな苦痛をもたらすものである。

しかも、寝たきりなので、血液がどんどん背中側に溜まって鬱血するような状態となり、皮膚もこすれてただれて本人は痛みに苦しむ。ただ「安らかに寝ているだけ」ではない。

「人間は寝たきりで生きられる身体ではない」ので次々と問題が発生するというのだ。

Next: 自分がどのように苦しいのかをうまく伝えられずにもがき続ける

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